抜群に働きがいある会社と見かけ倒しの会社の差 社会の期待に応える人間でありたいと思わせるか

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つまりパイロットが選択する行動の影響は、組織の仕組みのなかで結局は本人に戻ってくるということだ。そういう意味では、選択の自由が与えられているとはいえ、新たな規範に従わない限り面目を失う可能性があったのだ。

調査結果はなかなか興味深いものであった。パイロットが燃費を向上させる行動をとるインセンティブになったのは、「同僚の手前バツが悪い」というような“恐れ”ではなく、自分自身が炭素排出量の削減という“社会の期待(あるいは会社全体の規範)”に応える人間でありたいという“願望”だったのである。

<このナッジを、335人のパイロット、4万便あまりのフライト、10万強のパイロットの判断に広く適用することができるだろうか。人間の脳には、こうありたいという自己のイメージを実現するための微細な調整機能が備わっていることから、このナッジは広く適用できるはずだ、とわれわれは前向きに考えた。(175ページより)>

その考え方は正しかったようだ。データを分析した結果、3つのグループはすべて、“燃費を向上させる行動”をとっていたのだ。そればかりか、実験が行われているのは知っていても、同じナッジを受け取っていない対照群のパイロットもまた、同じように燃費を向上させる行動をとっていたという。

<これは、おそらく環境の変化に伴って行動が変化するホーソン効果か、見られていることを意識した効果だろう(ホーソン効果とは、1920年代のホーソン工場の実験で、明かりを替えたことで作業効率が高まったことにちなんで名づけられた)。ヴァージン航空のケースでは、単に燃料の使用量が計測され、われわれエコノミストにデータが送られると知らせるだけで、十分にパイロットが習慣を変えるインセンティブになった。産業心理学では、作業効率を向上させる手法としてホーソン効果が活用されているが、まさにパイロットでその効果が確認できたわけだ。(175ページより)>

インセンティブの効果は絶大

ナッジを適用した3つのグループのなかで、最大の効果が上がったのは第2のグループだったそうだ。毎月の実績に加え、明確な燃費節減目標を示し、目標達成を促すメッセージを受け取った人々。燃費向上効果は、前月の実績だけを知らされたグループを28%も上回っていたというのだから驚かされる。

次ページ目標を達成できないかもしれないという可能性だけで
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