千葉県の市役所「生活保護担当職員」の呆れた実態 衆人環視でのタメ口に「嘘つき」「泥棒」呼ばわり

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結局、タケアキさんがこの自治体で生活保護を利用したのは半年足らず。NPO法人の支援もあり、現在は契約社員として働いている。ダメ押しのエピソードを紹介すると、CWとの最後の面談では「今後、NPO法人から『面倒見たんだから、給料からいくらか払え』などと言わるようなことがあったら、すぐに私たちに教えてくださいね」と言われたという。

専門知識や経験が不足している

まともなNPO法人が給料のピンハネなどするわけがない。生活困窮者支援に取り組む民間組織に対するこの手の偏見は、最近とみに目に余る。いったい何を根拠にしているのか、つくづく謎だ。

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私は、CWの過重労働が常態化していることも、意思を持ったCWがいることも知っている。一方で専門知識や経験が不足しているCWが少なくないのも事実だ。何より問題なのは、一部のCW自身に生活保護利用者への偏見があることなのではないか。

タケアキさんに話を聞いた後、実際に千葉県内の市役所に運んでみた。職員に、一般に配布している生活保護のしおりはあるかと尋ねると、「申請者ご本人ですか?」という質問に始まり、申請者は知人か家族か? 住まいは? 収入は? と矢継ぎ早に聞かれた。

私が「一般向けの配布物がないなら結構です」と言うと、「そういうわけではないのですが……」と担当者。すったもんだの揚げ句ようやく別室からしおりを持ってきてくれた。その表紙には「生活保護の申請は国民の権利です」との記載があった。多くの質問に答えなければアクセスできない権利とは──。残念ながらいまだ“水際”のハードルは高い。

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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