慣れない仕事で腰が筋肉痛になったのかな――。最初はそう軽く考えていた。しかし痛みはひどくなる一方。あっという間に夜眠れなくなり、トイレに行くのにも苦労するようになった。
2年ほど前、愛知県にある大手自動車メーカー系列の工場の派遣労働者だったシュウゴさん(仮名、27歳)は椎間板ヘルニアを発症したときの様子をこう振り返る。
「バンパーの溶接部分をチェックする仕事でした。1日に500台、多いときで800台。(バンパーの)下部は腰を折り曲げて、左右の側面は腰をひねって確認します。働き始めて間もない職場で覚えることも多く、寮と工場の往復でしたから、仕事が原因としか思えなかったのに……」
「前例がない」と労災を認められなかった
痛みを訴えたシュウゴさんに対し、派遣先会社の上司らは備え付けの救急箱から湿布をくれた。ただ同時に「病院には、絶対に1人では行かないように」と強く念押しされたという。指示に従って上司と共に病院に行ったところ、医師からは椎間板ヘルニアと診断されたうえ、「仕事が原因と疑われます」と告げられた。
ところが数日後、派遣先会社からは労災は認められないと伝えられた。理由は「前例がないから」。これまでこの職場で腰を痛めた人はいない、というのだ。上司は追い打ちをかけるようにこう言った。「仕事以外のところで、自分の不注意で痛めたのではないか」。
一方の派遣元会社はどのような対応だったのか。担当者の口から出たのは信じがたい屁理屈だった。
「正直こっちも困ってる。君のせいでうちも泥を塗られた形。(労災ではないという)派遣先の判断に従えないなら、次の仕事を紹介するのは厳しい。(その場合は)寮を出ていってもらう。でも、もしこちらに全部任せてくれるなら、ちゃんと面倒は見るから」
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