男性誌で「不妊治療」マンガを連載した意外な背景 主人公は胚培養士、作者・おかざきさんに聞いた

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――不妊治療は一般化してきても、男性不妊はまだ浸透していない中、男性誌で描くのはすごく意味があると感じます。

SNSでリプをくれる人は、ほぼ女性ですが、蓋を開けてみるとSNSで拡散された第1話へのリーチは男性が70%もあったんです。それを聞いて驚きました。

男性も「何をすればいいのか、ちゃんと教えてくれよ」と思っている人が実はたくさんいるんじゃないの?と。

家庭内で当事者同士話すと、つい感情が入ってしまうから「まあマンガでも読んで」と渡すのがいいのかなと。男性も本当は「ちゃんと知りたいし、協力したいし、足並みをそろえたいと思ってくれているのでは?」という期待もあります。

ですが、あくまでもマンガはエンターテイメントなので、教科書代わりに読むのではなく気軽に楽しく読んでもらいたいです。

また、私は女性の味方のつもりですけど、男性の敵になるつもりはありません。

「男性は何もやってない」って言いたいわけでも、分断をしたいわけでもないんです。 読んでいる男性を傷つけないように、その辺はちょっと抑えつつ描いていきたいと思っています。

「ほぼ新人のような気持ち」

――男性向けに描くのと、女性向けに描くのとではスタンスを変えているのでしょうか?

1話をスタートする時点で、スタンスを変えないとダメだと痛感しました。

私が今まで描いてきた女性誌は、やっぱり感情 、感覚を描くのがメインの主戦場だったのですが、週刊男性誌は、How Toモノとか、うんちくモノがとてもウケる。

胚培養士(はいばいようし)ミズイロ (1) (ビッグコミックス)
『胚培養士(はいばいようし)ミズイロ (1) 』(小学館)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

今まではマンガ好きの人が読む雑誌に描いてきたし、ネタ回収を遠くにキャッチボールしても、ちゃんと読者さんが拾ってくれるという安心感があったのですが、今回は、今まで「読者さんは、これは読んでくれるだろう」と信じて投げてきたものは全然通用しないところに向けて描くんだなと思って、ほぼ新人のような気持ちです。

でも今回は男性向けというよりは、広く一般向け。家にあったら、おじいちゃん、おばあちゃんも読むかもしれないし、若い子どもも読むかもしれない。『スピリッツ』自体は、メイン読者が男性なので、監修しているクリニックも、お願いしている取材先も男性不妊に力を入れているところですし、女性の話も描くけれど、男性不妊も描きます。

――これまでのお話で、男性不妊、高齢出産、卵子凍結、精子凍結など、かなり深いテーマに切り込んでいます。この後、どういうテーマを描いていくのでしょうか。

胚培養士のドラマ、症例、お仕事紹介はもちろん、先ほどお話しした法整備の追いついてない部分を描けるのかどうかが、自分的には1つのハードルとしてあると思っています。

不妊治療は個人個人の治療経過や方針が違いすぎるので、全員に寄り添うことはできませんが、そこはマンガとして、エンタメとして楽しんでもらえればと思っています。

おかざき真里/高校時代からイラストや漫画誌へ投稿し、多摩美術大学卒業後、広告代理店の博報堂に入社。デザイナー、CMプランナーとして活躍しながら、1994年『ぶ〜け』(集英社)にて漫画家デビュー。CMディレクターと漫画家の二足のわらじで活動を続け、2000年、結婚を機に退社。『サプリ』『渋谷区円山町』『彼女が死んじゃった。』など映像化された作品も多数。現在『胚培養士ミズイロ』(週刊ビッグコミックスピリッツ/小学館)、『かしましめし』(フィール・ヤング/祥伝社)を連載中。
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吉田 理栄子 ライター/エディター

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よしだ りえこ / Rieko Yoshida

1975年生まれ。徳島県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、旅行系出版社などを経て、情報誌編集長就任。産後半年で復職するも、ワークライフバランスに悩み、1年半の試行錯誤の末、2015年秋からフリーランスに転身。一般社団法人美人化計画理事。女性の健康、生き方、働き方などを中心に執筆中。

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