元プロスポーツ選手だったSさん(男性・当時41歳)は、現在、経営者として働いています。昼も夜も取引先の担当者との会食が多く、筋肉質だった体型が少しずつ脂肪に変わってぽっちゃりしてきた自覚はあったそう。とはいえ気になる不調もなく、健康診断の結果が届いても、忙しさにかまけて見もしなかったとのことでした。
そんなある日、お子さんの誕生をきっかけに学資保険に入ろうと健康診断の結果を提出したところ、健康状態が悪いことを理由に保険会社から加入を拒否されてしまったのです。それを知ったご家族は慌ててSさんの健康を取り戻すために最適な医療機関はないかと調べ、当院の「スマート外来」にいらっしゃいました。
初診時の計測では、身長170cmで84.8kg。体脂肪率は27.9%。肝機能の状態を示す数値も基準値を超えていて、CTを確認すると血管が見えない中等度の脂肪肝。30〜149が基準の中性脂肪も251とかなり高い数値を示していました。普段の食生活について尋ねると、外食が多く、お酒もほぼ毎日飲む。年間200食はラーメンを食べているとのことでした。
減量のスタート時期が新型コロナウイルスの自粛期間中で会食がない好都合な状況だったこともあり、とにかく集中して食べ方を身に付け、最初の1カ月でまず2kg減を確実に達成するよう取り組むようお伝えしました。
「コンビニランチ」で“緩やかな糖質オフ”を実現
家庭での食事作りは奥さんが中心だったようですが、Sさんご自身がコントロールする昼食については、ルールを決めて実践してもらいました。
食事ルールを示すうえで、肝臓の脂肪を作るモトを知っておかなくてはなりません。肝臓脂肪の60%は皮下脂肪や内臓脂肪が溶け出したものです。残り40%のうち、食事でとった脂質からは14%。同じく食事でとった糖質から合成される分が26%です。脂質も影響しますが、それ以上に大きく脂肪を増やす要因になるのが“糖質”なのです。そのため、まずは糖質が多いご飯、パン、麺などの主食の量を控えることをルールにしています。
ただ、糖質をゼロに近づける極端な糖質制限では継続が難しく、食事での満足感も得にくくなります。なので、肝臓から脂肪を落としつつ、糖質が過剰にならない“緩やかな糖質オフ”を推奨しています。1食の糖質量は20〜40g。1日のトータルで130g以下になるようにします。
1食の糖質量を守るには、ご飯なら茶碗1/2杯(70g)、パンなら6枚切り1枚(60g)、麺ならゆでた後の重量で120gまでが上限です。この量なら主食の糖質量は25gを超えません。なお、一般的なラーメン店でのゆでた麺は並盛で280g程度。食べていいのは半分以下なので、ラーメン店での食事は現実的に難しいことになります。
その代わり、Sさんに活用してもらったのが「コンビニ」です。サラダチキンや豆腐バーなどのタンパク質をとれる商品、カップサラダ、小さなおにぎり1個の組み合わせで、コンビニの商品による肝臓をいたわるランチ献立ができます。
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