日銀は1月17、18日の金融政策決定会合で、金融政策の大枠を維持した。しかし、2022年12月にイールドカーブ・コントロール(=YCC、長短金利操作)政策を修正し、長期金利の変動幅を拡大したことは、金融緩和路線の「終わりの始まり」とみる向きは多い。YCCの撤廃やマイナス金利政策の解除など、日銀の「次の一手」に注目が集まる状況は続くだろう。
このような疑念を生みやすい背景としては、10年ぶりに日銀総裁が交代することが大きいが、金融政策が政治的要因で動かされている感があることも挙げられる。
毎日新聞は1月6日の記事で、2022年12月の決定会合で日銀が動いた背景には過度な円安の進行があったとして、「結局、政府と世論に、日銀が追い込まれたのが12月会合の結論だ」という日銀関係者の発言を紹介した。
2022年12月の政策修正は債券市場に衝撃を与える結果となったが、12月時点で円安傾向はピークを過ぎており、このタイミングで修正される可能性は低いという見方が市場では優勢だった。
しかし、世論や政治の状況はやや異なった。「悪い円安」に対する不安は、短期的な円高方向への揺り戻しでは拭えなかったということだろう。
「子会社」日銀は変わらず
世論との関係で思い出されるのが、2022年5月9日に安倍晋三元首相が「日銀は政府の子会社だ」と発言したことである。安倍氏は、政府が発行した国債を日銀が購入することについて、「子会社」という表現を用いて説明した。
2022年12月の政策修正は政府主導であったとすれば、日銀の独立性は岸田政権でも限定的だと言えよう。
岸田文雄首相はアベノミクスの代名詞の1つであった「トリクルダウン」を否定するなど「脱アベノミクス」を進めているような節があるが、政府と日銀の関係性についての解釈は安倍氏と変わらないように思われる。
安倍氏がリフレ政策を重視し、日銀の金融緩和を一貫して肯定していたことに比べると、世論に振らされている感のある岸田氏は日銀にとってより厄介な存在かもしれない。
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