日銀総裁の人事に注目が集まる中、2023年春の新体制に向けた動きが、日銀の審議委員から生じてきた。
むろん、2023年3~4月に任期が切れる総裁・副総裁の人事は重要だが、日銀の金融政策は総裁・副総裁(2名)・審議委員(6名)の合議制で決定されるため、審議委員の意見も重要である。
一連の審議委員の発言は、12月1日の野口旭審議委員(元専修大学経済学部教授)から始まった。野口氏は、来年の春闘において3%のベースアップが達成された場合も、「(日銀は)ただちに政策転換ということにはおそらくならない。もう少し時間がかかるのではないか」とした。他方、物価の基調が一変した場合には「(緩和見直しも)不思議ではない」とも述べた。野口氏は金融緩和に積極的なリフレ派として知られており、緩和の見直しについて言及したことは「変化」の印象を与え、やや意外感もあった。
銀行出身の田村氏は「点検・検証」を提案
さらに注目を集めたのが、12月2日に報じられた田村直樹審議委員(元三井住友銀行 上席顧問)のインタビュー記事(朝日新聞、Bloomberg)である。田村氏は「しかるべきタイミングで、金融政策の枠組みや物価目標のあり方を含めて点検、検証を行うことが適当だ」(朝日新聞、以下同)と述べた。新体制が始まる前に「点検・検証」の議論を持ち出したことは、市場の想定外だった。
ほかにも、田村氏は「当面は金融緩和を継続する下で、物価と経済の好循環につながるか見ていく」とした一方、「経済の好循環が実現できていれば、例えば、1.8%でもいい。硬直的ではなく、フレキシブル(柔軟)に考えたらいい」とした。点検や検証の時期は「今後の物価や賃金、経済の動向次第で、機械的に基準を定めることは困難。そういったタイミングがすぐ来る可能性もあるし、少し先になる可能性もある」「金融政策の修正が必要かどうかは、検証の結果次第だ」と述べた。
また、「金融機関の収益を圧迫して金融仲介機能に悪影響を与える可能性や、国債市場の機能度の低下がある」「長期にわたる金融緩和が、発揮されるべき市場原理の効果を抑えてしまっている面は否めない」などと述べた。
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