キンプリ脱退問題と「悪い円安」は無関係ではない 一定の内需が海外進出の機運を低下させた

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「海外進出に対するメンバー間の温度差」が3人の脱退発表につながったと言われるキンプリ。日本企業の置かれた状況にも似ている(編集部撮影)

11月4日、人気アイドルグループ「King & Prince」(キング・アンド・プリンス、通称キンプリ)の岸優太さん、平野紫耀(しょう)さん、神宮寺勇太さんの3名が2023年にグループから脱退(かつ事務所を退所)することが発表され、ファンに衝撃を与えた。

筆者はジャニーズアイドルに詳しくはないのだが、平野さんの脱退理由に興味を持った。それは、「自分の年齢と向き合ったときに海外で活躍できるグループを目指すのは、もう遅いなと感じ、目標を失った」というものである。3人が脱退を決めた理由は「海外進出に対するメンバー間の温度差」だと言われている(「"完璧なアイドル"キンプリが抱えた『生きづらさ』」 )。

キンプリ脱退問題に対し、「円安で海外進出の経済的な恩恵は大きくなっているが、彼らにとってはそういう問題でもないのだろうな」と、率直に思った。

キンプリが示した日本的な海外進出の難しさ

アイドルグループの海外展開については、江戸川大学の西条昇教授(芸術学)が11月5日付毎日新聞のインタビュー記事で解説している。

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西条氏はキンプリ3人の脱退について「海外進出に向けて行動する難しさ、理想と現実のギャップに思い悩み、メンバー内で意見の相違が出てくるようになってしまったのではないでしょうか」「日本で、ジャニーズが男性アイドルの中心に居続ける一方で、BTSに代表される韓国の男性グループは韓国だけではなく、日本、その先にはアメリカと、グローバルに活動する戦略、徹底的なマーケティングを立案しています」「日本国内で売れることや国民的アイドルを育てることを目指してきたジャニーズと、最初から徹底的にマーケティングをして世界を目指す韓国勢のアプローチが対照的」と分析した。

韓国とは違い、国内に一定の市場規模がある日本のアイドルは海外進出の「準備」や「覚悟」が劣後しやすいということだろう。

西条氏の分析は、アイドル戦略だけでなく日本企業全般に当てはめることができる。すなわち、いかに海外に大きな市場があるとしても、その市場を開拓するには実力や準備が必要であり、それは一朝一夕にはできない。ましてや、国内に一定規模の市場があるとすれば、その機運は高まりにくい。突如として「円安」という海外収益の改善機会が生じても、すぐには変わらない。

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