キンプリ脱退問題と「悪い円安」は無関係ではない 一定の内需が海外進出の機運を低下させた

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2022年は大幅に円安が進む中、「悪い円安」という言葉が新語・流行語大賞の候補30語に選ばれた。「悪い円安」の本質は何なのか? さまざまな議論が行われているが、筆者は日本企業が円安を恩恵だと感じなくなっていることが最大の要因だと考えている。キンプリと同様、企業サイドでグローバル市場を開拓する機運が不足しているのではないか。

スイスの研究調査機関であるIMD(国際経営開発研究所)が、2022年6月に発表した「IMD世界競争力ランキング(WRC)2022」によると、日本の国際競争力は63カ国中、34位となった(1990年代初頭の日本は1位)。同調査はビジネス環境などを評価したものであり、日本企業の実力を測る調査ではない。

しかし、これだけ大きくランキングが落ちていることや、半導体分野でのシェア低下という事実もあわせて勘案すれば、日本企業の海外進出の機運自体が低下しているという考察はそれほどズレたものではないだろう。

ほかにも、鉱工業出荷の内訳によると、2010年以降の輸出向け出荷は2000年代と比べ、伸び悩んでいる。ジェトロ(日本貿易振興機構)が行っている海外進出の方針に関するアンケート調査では、海外事業について「さらに拡大を図る」という回答は低迷している。

今や日本企業は円安をポジティブに捉えにくい

これらの事実をまとめれば、2000年代まではチャンスだった円安を、企業がチャンスと捉えることができなくなっている可能性が高い。それだけでなく、国際競争力低下や資源高、円安により交易条件が悪化し日本人が貧しくなることによって、「成長はしにくいが安定的な収益源」だった日本の市場が縮小していくことを、企業はネガティブに感じやすくなっている面もあるだろう。

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