緩和修正で住宅ローンは変動志向、保険はお得に? 大規模緩和の副作用は大きかったが反動に注意
日本銀行の黒田東彦総裁による「サプライズ」が飛び出し、金融市場が激しく動揺した。12月20日の金融緩和策の修正で為替市場は円高方向に振れ、債券市場では長期金利の指標となる10年物国債の利回りが急上昇(価格は下落)した。金利の変動幅が高まれば企業や国民生活への影響も避けられない。
すでに足元のメガバンクの住宅ローン(10年固定金利)は、アメリカの利上げの余波で1年前から0.1~0.4%ほど上昇している。今回の日銀の金融政策の変更により、2023年1月以降はさらなる上昇も予想される。
2022年6月に住宅金融支援機構が公表した住宅ローン利用者の実態調査によると、2021年10月~2022年3月にローンを借り入れた人の73.9%は「変動型」を利用し、「固定期間選択型」は17.3%、「全期間固定型」は8.9%と「変動型」が圧倒的に多い。
変動金利が指標とする短期の政策金利はマイナス0.1%に据え置きとなったため、今回の修正で影響を受けない「変動型」の希望者がさらに増える可能性はあるが、これからの政策転換に注意が必要だろう。
20日の生損保株は逆行高
金利上昇は、生命保険会社が契約者に約束する利回りである予定利率にも影響する。参考とされる金融庁の標準利率は2017年4月に1.0%から0.25%に引き下げられ、各社は予定利率を引き下げたため保険料の上昇につながった。しかし、株式や債券などで運用される利回りが大きくなれば保険料を支払うために準備している責任準備金を増やすことができる。長期金利の上昇に伴う利ざや期待から12月20日の生損保険株は日経平均が急落する中で逆行高を演じた。契約者にとっても保険料が低くなる可能性がある。
とはいえ、企業には借入金利の上昇というデメリットに加えて、増税や賃上げ要請に伴う負担増もある。政府は防衛費増額の財源として法人税の増税を決め、岸田文雄首相は物価上昇分をカバーする賃上げを繰り返し企業に求めてきた。円安のメリットを享受する大企業では過去最高益を記録しているが、円安効果が剥落し、税負担や人件費増が加わるダメージは小さくない。
10月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)が前年同月比3.6%上昇するなど物価高に苦しめられてきた国民にとっては、円高に向かうことは負担感を和らげることにつながる。
10月は一時1ドル=151円台と約32年ぶりの円安水準となっていたが、12月21日は一時130円台にまで円高に振れた。輸入品などの価格が下がれば、日常の生活費も支出が抑えられるだろう。ただ、企業が負担増に伴い賃上げ幅を少なくしたり、人件費を抑制したりすれば、消費マインドが冷え込むことも予想される。
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