緩和修正で住宅ローンは変動志向、保険はお得に? 大規模緩和の副作用は大きかったが反動に注意
では、市場の動揺も招いた黒田総裁による緩和修正の狙いはどこにあるのか。長年、日銀を取材してきた全国紙経済部デスクは「物価上昇による国民の悲鳴が緩和圧力となり、抵抗しきれなくなったのだろう」と見る。
ただ、黒田氏は2013年の総裁就任時に「2%の物価上昇」を目標に掲げ、市場を驚かせるほどの大規模な金融緩和政策を採ってきた。今年の消費者物価指数の上昇を受けても「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」との見解を示すなど修正する考えはないと強調してきている。
こうした考えは、つい最近まで見られたものだ。9月26日に「(長期金利の変動許容幅について)0.25%の幅を広くしたら、明らかに金融緩和の効果を阻害する」とし、10月28日にも「今すぐ金利引き上げ、『出口』がくるとは思っていない」などと発言し、方針転換を否定している。つまり、物価上昇だけが緩和修正に踏み切る決定打になったとは思えないのである。
総裁交代に向けた地ならし?
そこで浮かび上がるのは、黒田氏の任期問題だ。日銀総裁としての任期は2023年4月に終わりを迎える。日銀総裁の人事案は政府が国会に提出し、同意を得る必要があるが、今の岸田政権は大規模な金融緩和政策を引き続き採用することに消極的とされる。要するに、次期日銀総裁は緩和修正に向かう人事案が検討される可能性が高いということだ。
黒田総裁は12月20日の記者会見で「出口戦略」に向かうとの見方を否定したものの、次期総裁が方針転換をしやすいよう今回の修正で事前に環境を整えたと見ることもできるだろう。後任としては修正に前向きとされる中曽宏元副総裁や雨宮正佳副総裁らの名が挙がる。
ただ、金融引き締め政策への転換は景気後退懸念もつきまとう。1989年5月の公定歩合引き上げや2000年8月のゼロ金利政策解除、2006年3月の量的緩和政策解除が景気後退につながった経緯があるからだ。実際、12月20日の日経平均株価は景気の落ち込みを懸念した売り注文が広がり、一時800円以上も下落した。
安倍晋三元首相とともにアベノミクスを牽引してきた黒田氏。自らを否定するような方針の転換を受けて企業や国民生活、そして日本経済はどう変化していくのか。欧米の中央銀行の出方とともに、次期日銀総裁の人事がさらに注目されることになりそうだ。
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