追い詰められた「日銀」、事実上の利上げの"次" 金融市場と日銀の仁義なき戦いが向かう先
金融市場と日本銀行の戦いは、どちらが勝っているのだろうか。12月20日、日銀は市場の圧力により、10年物日本国債の上限金利を0.25%から0.5%に引き上げるというやりたくもないことをやらざるをえなかったのは間違いない。しかし、これが今後の金利の動き、円の価値、金融市場の安定にどのような意味を持つのかは、今のところ誰にもわからない。
例えば、円は日銀が動く前の1ドル=137円から、翌日のニューヨークでは131円まで跳ね上がった。しかし、その多くは、今回の金利上昇に続いてさらに金利が上昇することに賭けるトレーダーによるものである。
金融市場は、ビッグサプライズに反応して大きく変動することが多い。したがって、市場が債券トレーダーと日銀の戦いを見極めながら、今後数週間から数カ月の間に円/ドルがどのような状態になるかはまだわからない。
低金利政策からの「脱却」ではない
日銀の黒田東彦総裁は、たんに「蒸気弁」を開けて圧力を逃がしながら、超低金利を維持し続けることができると考えている。この動きは「利上げではない」と黒田総裁は記者会見で語り、むしろ 「市場機能の改善 」を目的とした技術的な措置であったと述べた。
同氏が動いたのは、日本国債の市場におけるいくつかの歪み(以下で説明)が、社債市場や、他の一部の金融市場に波及しているためだ。金利の引き上げは、日銀の10年にわたる戦略からの脱却の第一歩ではないと黒田氏は主張する。「金利を上げるつもりも、金融を引き締めるつもりもまったくない」。
日銀の上層部は、金利を上げても大丈夫と考える前に、少なくとも年3%の賃金の上昇を持続的に見たいと繰り返し発言している。今年の春闘交渉で連合が5%の賃上げを要求したのは、賃金情勢が変わりつつあることを意味すると期待する関係者もいる。しかし、エコノミストの予測通り、アメリカとヨーロッパが2023年に景気後退に入る可能性が高いとすれば、日本企業が賃金を大幅に引き上げるとは考えにくい。
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