追い詰められた「日銀」、事実上の利上げの"次" 金融市場と日銀の仁義なき戦いが向かう先
もう1つの要因は、金利の急激かつ大幅な上昇は、深刻な結果をもたらすという点だ。金利が上がれば、銀行、年金基金、保険会社などの保有する既発債の価値が下がり、バランスシートが圧迫される。
一方、四半世紀に及ぶゼロ金利は、日本企業にタダ同然の資金を供給してきた。現在、銀行融資の37%が金利0.5%以下、そのうち半数が0.25%以下である。融資需要が低迷する中、国債金利と連動して銀行貸出金利がどの程度上昇するかは不明である。
仮に銀行貸出金利が1ポイントでも2ポイントでも上昇すれば、数百万人の従業員を抱える多くの企業の支払能力は一気に低下することになる。その多くは、中小企業全体の約40%に信用保証と直接融資を行っている政府による救済を受けなければならなくなるだろう。これらはGDPの約11%に相当する。しかし、信用保証の対象は最大でも80%なので、銀行は不良債権の急増に悩まされることになるだろう。
円とインフレという要因
円の価値、という問題もある。過去1年半の急激な円安は、日本のインフレ率を上昇させる大きな要因となっている。実際、この間の物価上昇の9割は輸入集約的な食品とエネルギー部門によるものだ。それが消費者の購買力を大きく低下させた。円の価値がある程度回復すれば、インフレ圧力が弱まり、日銀の利上げ圧力も弱まるだろう。
これは、他の地域のインフレと金利の動向に大きく依存する。インフレがピークに達したという兆候もあるが、そうであれば他国の金利は下がるはずである。その結果、円は多少回復するだろう。しかし、インフレの修正に時間がかかるようであれば、円安圧力は続く可能性がある。
インフレの進行も要因となる。黒田総裁は、日本のインフレのほとんどは円安とサプライチェーンの遮断の影響によるものだと考えており、それは正しい。それゆえ、日本の現在のインフレは一時的なものであると主張している。
実際、日銀は10月の「経済・物価情勢の展望」で、2022年度に2.9%上昇した後、2023年度と2024年度のインフレ率はわずか1.6%まで減速すると予測した。これは日銀の目標である2%をも下回っている。
もし日銀の予想が正しければ、日銀への利上げ圧力は緩和される。しかし、日銀の予測にはいい実績がない。例えば、わずか3カ月前の7月の展望では、2022年度のインフレ率は10月に予測した2.9%ではなく、2.3%になると予測していた。2023年について日銀が間違えば、日銀はより大きな圧力に直面することになる。
日本の諺に「一寸先は闇」というのがある。金融市場と日銀の政策にも同じことが言えるようになった。
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