金融緩和策への世論の批判はさらに大きくなっている。政府・日銀が中途半端に金融緩和の修正を模索することで市場に混乱が生じ、一段と世論が緩和策を否定する負のスパイラルに陥っている構図にもみえる。この状況を勘案し、日銀が当初想定していた以上にYCC撤廃を急ぐ可能性も否定できない。
JNNが1月7~8日に実施した世論調査では、日銀の金融緩和政策を「縮小したほうが良い」とした回答が50%と、「続けたほうが良い」の22%を大きく上回る結果となった。2022年11月の調査では「続けるべきではない」が44%となっていたため、金融緩和策に対する世論の反発が強まっていると言える。
2022年11月と比べれば円安圧力は相当程度、弱くなっている。それどころか円高圧力が強くなっている状況だが、むしろ世論の金融緩和策へのネガティブな印象は強くなっている。中長期的な目線で、もはやアベノミクス以降(黒田東彦総裁以降)の異次元緩和を修正すべきであるという考えが根底にあるのだろう。
世論が反発している状況は、日銀が行っている「生活意識に関するアンケート調査」でも示されている。
2022年12月調査では、物価が「(1年前と比べて)上がった」と回答した人(約94.3%)のうち「どちらかと言えば、困ったことだ」とした割合は86.8%まで上昇した。
また、「日本銀行を信頼していますか」という問いに対して、「信頼している」「どちらかと言えば、信頼している」の合計が39.5%と、2008年9月調査以来の低水準となった。
ようやく認知された2%目標、ただし悪者として
興味深い点は、同時に「物価安定目標」への認知度が上がっていることである。
「大規模緩和が円安やインフレ高進につながっている」という見方が強まる中で、日銀の政策の認知度が上がっている。金融政策のコミュニケーションとしてはかなり悪い状況と言える。
世論が大規模緩和への批判を強める中、「街角景気」を調査する景気ウォッチャー調査でも日銀の政策変更に注目が集まっている。ただし、世論調査の結果とは真逆であり、金融引き締め方向への動きを懸念する声が多い。
日銀の金融政策は「前門の虎、後門の狼」の状況と言える。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら