本当のところ「1日何歩」歩くのがベストなのか 害として報告されるのはほとんどが「けが」

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また、この研究では興味深いことに、歩行の強度(スピード)の影響も評価の対象にしており、こちらのほうは、歩数で調整をすると、死亡率との関連性が見られなかったこともあわせて報告されています。どうやらスピードではなく歩数こそカギのようなのです。

ここでは、歩数と死亡率との関連性を主にご紹介しましたが、実はウォーキングを含む有酸素運動は、死亡率だけでなく、心臓の病気、高血圧や糖尿病、少なくとも8つのがん、アルツハイマー病を含む認知症の発症率低下との関連性も報告されています。

また、病気のリスクを「減らす」だけでなく、認知機能や睡眠、生活の質を「改善させる」効果も指摘されています。

ただし、これらの結果は、そのほとんどが比較的大規模な観察研究で示された「関連性」です。すなわち、運動をする傾向と病気の発症率の低下との間に関連があることまではわかっているものの、実際に「運動をしたから病気が減るか」という因果関係までは明確になっていません。

運動には「害」もある

一方、運動には「害」もあります。「害」として報告されるのは、ほとんどが筋骨格系の問題、すなわち筋肉や関節のけがです。また、普段運動をしない人が運動をすると、運動習慣のある人よりもけがをする確率が高くなるという指摘も頭に入れておくべきでしょう。

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また、稀ですがより深刻な合併症として、脱水による腎機能の障害や、心臓に持病がある場合に不整脈を引き起こす可能性なども挙げられます。ただしこれらは、水分補給をこまめに行う、心臓の持病がある場合には主治医と事前に運動の中身について相談しておくなど、未然に防げる部分があるのも事実です。

こうした「害」と「益」の可能性を比較してみると、有酸素運動はほとんどの人にとって、益が害を上回るといえます。

以上から導かれる結論として、「歩く」という有酸素運動を好む方にとって、おそらく1日1万歩の歩行はあなたの健康を守ることにつながるでしょう。因果関係までは明らかになっていないという注意書き付きにはなるものの、1日1万歩程度の歩行が健康を守ることにつながる可能性が高いと考えられています。大きな心臓の持病などがなければ、害のリスクは益を上回るものにはならず、総じて健康増進のために勧められるといえそうです。

「運動は苦手だが、ウォーキングなら」という方は、それを取り入れる価値があるのではないでしょうか。

山田 悠史 米国老年医学・内科専門医

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やまだ ゆうじ / Yuji Yamada

慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ『FNN Live News α』のコメンテーター、 WEBマガジン『ミモレ』やニュースメディア『NewsPicks』の連載の他、コロナワクチンの正しい知識の普及を行う一般社団法人コロワくんサポーターズの代表理事、カンボジアではNPO法人APSARAの常務理事として活動。著書に『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(講談社刊)、『健康の大疑問』(マガジンハウス新書)がある。Twitter:@YujiY0402

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