本当のところ「1日何歩」歩くのがベストなのか 害として報告されるのはほとんどが「けが」

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そのうえで、歩数と死亡率の関連性を評価してみると、次のグラフのような関連が見られました。とてもきれいな、わかりやすいグラフになっています。

JAMA 2020; 323: 1151–1160. を参考に作図 

1万歩を超えたあたりからはカーブがフラットに

また、年齢別に見てみても、年齢に関係なく、この関連性が見られることがわかります。

このような関連性は、心血管疾患やがんの死亡率でも同様に見られており、これらの結果から、1日の歩数と死亡率の間には、少なくとも1万歩を超えるあたりまでは歩数が増えれば増えるほど、死亡率が低下するという関連性が確認できます。

一方で、1万歩を超えたあたりからはカーブがフラットになっています。

これはある程度の強度や量までいくと、運動には「天井」が存在するということを示唆しているともいえます。なお、この「天井」については、他の研究で繰り返し指摘されており、あくまで何事もバランスなのかもしれません。

ここで、研究結果を見慣れている方であれば、「とはいっても、よく歩く人ほど肥満が少なくて、実は肥満が死亡率と関連しているんじゃないの?」と考えるかもしれません。しかし、この研究では、歩数以外のさまざまな健康による影響が邪魔しないよう、 年齢や肥満、喫煙や飲酒、さまざまな持病などといった要因が、解析にあたって調整されています。よって少なくとも肥満に関してはあまりその心配はなさそうといえます。

もちろん、この研究で調整しきれていない持病などが影響を与えた可能性はあるでしょう。一つの研究で真実をすべて明らかにすることは難しく、このように必ず限界もあるのです。

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