「どこに勤めるか」でなく、「何をしたいか」 東大で博士課程に進んだが進路に迷い

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そして3番目の選択肢についても同様で、ご自身がどのようにその仕事を定義して臨むか次第です。Ph.D.の道をご自身にとって「中途半端」だったから、と書かれていますが、もしかしたらそうなってしまった理由のひとつに、ご自身にとってのその道(物理学のPh.D.)を「とらえるための軸」がなかったからなのかもしれませんよ。

先ほどの接客業の例ではありませんが、受け身だとどんな仕事でも中途半端になってしまいます。そうでなく、どんな仕事であれ、「仕事に対して、自分がどう誇りを持てるか、どんな志を持てるかで勝負は決まる」のではないでしょうか。

本連載でも何度も書いていますが、私自身が周りから何と言われようと、新卒でITバブル崩壊後のベンチャーに入り、周りのフリーターよりも安い給与で頑張ってこられたのは、まさにその信念があったことが理由のひとつです。

したがって、ここは頭でっかちにならずに、それぞれ気になる職種があれば複数の会社の社員に会ってみて話を聞いてみる、自分の考えをぶつけてみる、そしてその中で自分自身の感触と相談をしてみる、そういったプロセスを経ることが求められます。

完璧な仕事を探すのではなく、自分がそこに近づく

ところでいただいた質問で気になったのが、「外資」を強調されている点です。明確な事実に基づいた合理的な理由があればかまわないのですが、私自身は、外資だから、国内系だから、と大きく2つに分けてしまうのは、あまり意味がないと思っています。

いろいろと書いてきましたが、ぜひ完璧な仕事を探す、というスタンスではなく、仕事を自分で完璧なものにしていくという姿勢を忘れずに、これからの人生を過ごしていただきたいと思います。

十文字さんは東大でPh.D.にまで行けるような、恵まれた環境にいらっしゃるわけですから、ぜひそのアドバンテージを人のため、社会のために最大限活用することを考えてみてください。そのための第一歩は、自分自身で自分の仕事に対する志と覚悟を決め、仕事を自分なりに定義することです。

もしかしたら今は仕事に対して何もわからない状態かもしれませんが、学生とはそういうものです。ただしそれは言い換えれば、どんなこともできる可能性に満ちあふれている、とも言えます。人々の生活に影響を与えたいというのは、非常によい夢だと思います。そのためには、まずは十文字さんご自身の幸せの形を見つけてみましょうよ。心から応援しております。

※安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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