"なぜか心惹かれる人"がしている、3大自分語り術 あの人もこの人も、語るストーリーに企みがある

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「高い目標を設定する」ことは10代後半から30代前半くらいまでの若い世代には、特に有力な武器となります。若い世代は資金も人脈も実績も十分ではないので、自分のありのままを伝えれば、それだけで小さい存在であることが引き立つからです。

もう1つ、若い世代が高い目標を掲げるべき理由があります。それは「多くの世の中で重要なポジションに就いている熟年世代は、心のどこかで高い志に向かって努力している若者に力を貸したい」と思っていること。名声や地位を得た熟年世代は「高い志を抱く、少し生意気な若者」が好きなのです。「世の中に人を残したい」という想いのため、あるいは、かつての自分を見ているような心境になるからかもしれません。

創業間もない頃、まだ24歳の若者だったソフトバンクの孫正義社長の例は有名です。孫社長はパソコンソフトの卸売業で起業しました。パソコンソフトを家電量販店などに卸すビジネスです。当時の孫社長は留学先のアメリカから帰国して間もない時期。当然、資金も人脈も十分ではありません。

ソフトウェアの卸で起業するには、多くの協力者が必要です。パソコンソフトのメーカーはもちろんのこと、資金も。

若き日の孫社長は、見事に多くの協力者を自分の夢に巻き込むことに成功しました。シャープの副社長、日本を代表するソフトウェア企業のトップなど、そうそうたる面々です。孫社長が銀行融資を受ける際、シャープの副社長は個人保証までするほど支えたのです。

なぜ、満足な交渉材料など何も持っていない若き日の孫社長は、各界を代表するような人々の協力を得られたのでしょうか。もちろん、ビジネスプランの精緻さもあるでしょう。孫社長の卓越した能力が、伝わったということもあるでしょう。ですが、それだけではないはず。損得勘定だけで言えば、何も持たない若者よりも大企業と組んだほうがはるかに安全ですから。

「情報革命を起こす」という孫社長が語る「高い志」に、各界のトップたちが心を動かされたという面もかなり大きかったはずです。「小さな存在」が語る高い目標に、大企業のトップたちが巻き込まれたのです。

ちなみにソフトバンクは若き日の孫社長を支えた人々への感謝を忘れないようにするため、毎年ゴールデンウィークの平日の1日を「恩人感謝の日」と定めて、社員の休日にしています。

大企業になってからもストーリーは役に立つ

この「小さな存在が大きな敵に挑む」というストーリーの構造ですが、孫社長は大企業となった後も用いています。

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