"なぜか心惹かれる人"がしている、3大自分語り術 あの人もこの人も、語るストーリーに企みがある

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ストーリーの魅力をアップ② 具体的な「誰か」を敵にしない

ハリウッド映画の場合は、挑むべき対象は強い個人であれ、巨大な組織であれ、目に見える存在です。しかし人を巻き込むストーリーの場合は、“ハッキリと特定できる”具体的な個人や企業を狙い撃ちにしないほうがよいでしょう。戦うべき相手はあくまで「業界の常識」や「会社の文化」といったような、抽象的な概念にすべきです。

先述の旭酒造の桜井社長も、戦う相手を「景品や広告の力で売る、低品質で酔うためだけの日本酒」としています。決して具体的な日本酒名を挙げてはいません。

ソフトバンクの孫社長は、NTTという特定の企業名を打ち出していました。これはNTTそのものというより、NTTという企業名を「通信業界の既得権」の象徴的な存在として、「戦う相手」に設定していました。微妙なところですが、いずれにしても例外的なケースです。

特定の名前を挙げるべきではない理由は2つあります。

1つ目の理由は、具体名を挙げられても、聞く側にとっては興味のある情報ではないこと。

社内であれば、ある特定企業からのシェア奪還を目標に掲げることに意味があります。ですが、たいていの場合、取引先などの部外者から見れば、どちらの会社のシェアがどうなろうが「どっちでもいいこと」。つまりストーリーとして語っても、関心を持ってもらえないのです。

部外者も巻き込むためには、「自分と共通の敵となる存在」と戦うべきなのです。例えば旭酒造の場合だと、「低品質で酔うためだけの日本酒」が減ることは、日本酒の愛好家「全員」にとって望ましいこと。自分と相手の「共通の敵」だからこそ、相手を巻き込むことができるのです。

具体的な名前を挙げるべきではないもう1つの理由は、「無用の敵」をつくることになること。何かのきっかけで、その具体名として挙げられた相手の耳に入るかもしれません。そうなると、相手としても「売られた喧嘩は買う」ことになってしまいます。今はSNSなど、足を引っ張る手段はいくらでもあります。わざわざ自分から「足を引っ張られる危険」を犯す必要はありません。

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