"なぜか心惹かれる人"がしている、3大自分語り術 あの人もこの人も、語るストーリーに企みがある

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私が会社員時代を振り返って、最も後悔していることがあります。それは、あまりに社内に敵を作り過ぎたということ。自分の「実績」に、確かに自負もありました。自分なりに「正論」を言った結果、意見の異なる人と対立したことが度々あります。そうした対立を、私は「あいつに負けないように頑張ろう」と自分を鼓舞するための手段としていました。

確かに対立によって、自分を鼓舞できた側面はありました。ですが、常に完璧な結果を出せるわけではありません。少しでも失敗したときには、対立相手は当然ですが反撃してきます。このような緊張関係を同じ職場で何年も続けることは建設的ではありません。

決定的な対立関係に陥らなければ、いつか相手が味方に転じる可能性も残すことができます。

今、自分自身が50歳近くになって周囲を見渡してみると、成果を出し続けて評価され続けている人で、かつての私のような「喧嘩をいとわない」スタイルの人は、ほとんどいません。「一流」と目されている人ほど、人間関係で対立を生み出さず、意見の異なる相手であっても敵対関係に陥ることはないと、この年齢になって痛感しています。あえて「敵をつくらない」ということは、重要な生存作戦なのです。

ストーリーの魅力をアップ③ 逆境を経験している

3つ目のテクニックは、「経験した逆境」を伝えるという方法です。自分と同じような逆境にあった人が、困難に立ち向かい、克服する。そんな主人公の姿に、多くの人が心を揺さぶられるのです。具体例をあげましょう。

cotree(コトリー)は、職場での人間関係や自分自身の将来に悩むビジネスパーソンに、オンラインでカウンセリングを提供しているベンチャー企業です。

創業から間もない頃から、多くのメディアで取り上げられてきました。創業者の櫻本真理氏のストーリーは、逆境を乗り越えた力強さを感じさせ、多くの人の共感を得られるものとなっています。

櫻本氏は広島で3人きょうだいの2番目として生まれた。父は若くして他界し、母の女手一つで育てられた。母は子どもたちの自由意思を尊重するタイプで、櫻本氏が中学生の時に米国へ1カ月の短期留学を許してくれた。そこで実感した世界の広さをもう一度味わいたくて、高校で米イリノイ州にある学校に1年間留学した。
ただ2度目の留学は楽しいことばかりではなかった。一部の同級生から日本語なまりの英語をからかわれたり、日本を象徴するブランドとして「トヨタ、トヨタ」と連呼されたりと、見下された。
いじめを受けるのは初めてで、落ち込んだ。同時に、いじめられている時の自分の心情や、いじめっ子の心理に興味が湧き、高校に設けられていた心理学の授業に引きつけられた。
京都大学に進学すると、進化心理学に基づく行動経済学に熱中した。卒業後はモルガン・スタンレー証券(当時)に短期間勤めた後、ゴールドマン・サックス証券に転職。証券アナリストとして、市場参加者の心理面から株価の妥当性を分析した。
転機は2008年に訪れる。リーマン・ショックの影響で会社の業績が悪化し、リストラの一環で同僚や上司が次々と退職。社員をコストとして扱う合理化策に優しさはなかった。櫻本氏は会社の姿勢に疑問を抱き、それまで激務でありながら楽しさが勝っていた仕事が苦痛になった。ついには睡眠障害を発症して、心療内科に通うことになる。
(中略)
10年にゴールドマン・サックス証券を自主退職すると、複数のスタートアップの経営を手助けするなどして、事業立ち上げの経験を積んだ。そして14年にコトリーを設立する。(出典:『2021年8月16日 日経ビジネス』)

父の他界、海外での日本人へのいじめ、そして社会人になってから周囲のリストラや睡眠障害。櫻本氏は数々の逆境に立ち向かって、克服してきたのです。

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