景気の緩やかな回復基調が続く中、不動産市況も堅調だ。国土交通省が今月発表した2015年初の公示地価は、東京、大阪、名古屋の3大都市圏で住宅地、商業地ともに2年連続で上昇した。全国平均で見ると住宅地は前年からわずかながら下落だが、商業地は7年ぶりに下げ止まり、横ばい。地方都市は厳しいが、大都市圏に限ってみると地価は回復傾向にある。
この事実は企業の視点で見ると、どう映っているのだろうか。東洋経済オンラインは、上場企業が保有している「賃貸等不動産」の含み損益を調査。含み益の大きい上位300社をランキングした。今回が初公開のデータとなる。
金融を含む全上場企業の有価証券報告書の中で、保有不動産関連の時価情報が唯一記載されている「賃貸等不動産関係の注記」の有無を確認し、2014年11月期までの1年間で開示があった993社が集計の対象だ(連結決算実施会社は連結ベース)。
不動産大手3社の含み益は4.4兆円!
期末時点の時価から簿価を差し引いた含み益が最も大きかったのは三菱地所の2兆0965億円だ。「日本一の大家」と知られるように東京・丸の内の一等地にオフィスビル群を擁するほか、アメリカ、イギリスなどの海外にも展開する。2位には三井不動産、3位に住友不動産と旧財閥系が続き、上位3社合計の含み益は4兆4450億円にも上る。当然ながら不動産をたくさん保有している業種・業態、言うなれば伝統的な大企業が上位に並んでいる。
一方、今回は公開しないが含み損を抱える企業は269社。全体の3割弱だが、その金額は最大で179億円と含み益に比べると小さい。バブル崩壊後の地価下落に伴う時価評価や減損会計の適用、地価の底入れなどにより、ほとんどの大企業では巨額含み損の解消が進んでいることが伺える。
賃貸等不動産は貸借対照表上では時価評価されておらず、含み損益は顕在化されていない。賃貸等不動産を直ちに売買・換金することは少ないが、含み損益を考慮した場合の企業財務への影響度が注目されるところだ。