とくにJASSOは外部に業務を委託しており、その委託先が数年で変わるため、「関わる人が専門知識を獲得しにくい」という指摘がある。職員によって知識や対応に、差が生じざるを得ない運用になっているというのだ。結果、誤った案内がなされてしまうこともある(なお、制度の複雑さが生む問題点については過去に、奨学金担当として働く札幌大学職員・水戸康徳氏がこの記事で詳しく解説している)。
和解はしたものの、信用情報に傷が付いてしまった
こうして、なんとかJASSOと和解はしたものの、一連の出来事が吉崎さんの人生に与えた影響は大きかった。
その1つが、滞納によって信用情報に傷が付いてしまったこと。いわゆる「ブラックリスト入り」だ。クレジットカードや家賃の支払いを滞納・延滞することで、信用情報機関のデータベースに金融事故情報が登録されることを意味し、クレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることが難しくなる。
「滞納が始まってからは、それまで使っていたクレジットカードがいきなり使えなくなり、退会させられたことがありました。そのときは、カードの支払いを滞納していたわけではないので、絶対に奨学金絡みなんですよね。
今でもクレジットカードそのものは作れますが、審査がゆるいと評判のカードの申請に通らなかったり、通ったとしても限度額は10万円だったりします。一応、私は年収1200万円なんですけどね……。
こうした事態が続くと、どこかの信用機関に名前が登録されていることは間違いないのですが、結局それがどこなのかはわかりません。JASSOいわく『全国銀行協会』にはすべての信用情報が載っているらしいので、最近そこに開示要求をして、返事を待っている最中です」
奨学金返済のため、少しでも節約したい吉崎さんは、毎月家賃が発生する賃貸での生活をやめて、マイホームを購入したいと考えている。だが、奨学金完済にはこれから20年はかかる予定であり、返済し終えたところで、信用情報が回復するには5~10年はかかるのが一般的だ。
つまり、最短でも61歳になって、ようやくローンが組めるようになるわけだが、当然ながらその年齢になって組めるローンがあるはずもない。家族のためのマイホームという夢は、このようにして頓挫しかけている。
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