また、予約制でもいいから実際に足を運べる窓口を作って、直接話ができるようにして、それぞれに担当者がつくようにしてほしいです。
現状では、JASSOに相談したいと思っても、連絡を取るのすら難しく、たらい回しにされるだけですからね。決して小さくないお金を貸している以上、借りる側の『自己責任』にせず、できる範囲の工夫はしていくべきだと感じます」
日本の奨学金制度の問題点
前後編にわたって報じてきたが、日本の奨学金制度は、よく出来た制度である反面、柔軟性に欠けているのも事実だ。吉崎さんの話から指摘できるのは、以下のような問題点だろう。
・JASSOの場合、奨学金返済は最長20年(240回)である。繰上返済はできるが、等分が基本線になっているため、猶予や減免のハードルが高く、柔軟な返済が難しい
・その結果、就職から半年経過時点で「貸与額を240で割った金額」を毎月きっちり払っていく必要がある(※返還回数は貸与額によって変わる)
・その一方で、多くの企業で新卒~新卒から数年間は給与が低めに抑えられている現実がある。このため、貸与額の多い人(理系や院卒など)は、いずれ高給取りになることが予想されていても、最初の数年間は負担が大きくなりやすい
20年という長期で返済できるのは良い点だが、一方で「等分ありき」なのも事実。たとえば文系の4大卒と、理系の院卒では貸与額が異なるため、返済の大変さの温度感がかなり変わってくるが、そこは考慮されない(「新卒等」という事由で猶予・減額申請をすることは可能だが)。
また、そもそも猶予・減免の条件が厳しいという指摘もできる。休職中の人にはありがたい制度だろうが、少なくない会社員は猶予も減額もハードルが高い。実際、本連載には猶予制度を利用した人が過去何度か登場しているが、「社会人になって以降に大学院等に再入学した人」が多い。
もし、吉崎さんが「社員寮のある会社」だったら話はまた違ったかもしれないが(家賃の支払いは奨学金返済に大きく影響する)、個々のラッキーに運を委ねるのは制度として不健全だろう。
吉崎さんに対し、「自己責任だ」「そういうルールだ」「就職してすぐに結婚するな」「子どもを作るな」などと非難するのは簡単だ。だが、そのような批判は、何も生まないどころか、下の世代を苦しめる場合すらある。
「返したいと思っている人に、柔軟に返させてあげるための改革」が進むことを願うとともに、奨学金を借りている大学生には、簡単ではないかもしれないが、上記のような観点も頭に入れたうえで、返済計画を立てることをオススメしたい。
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