選挙速報が開票率0%でも「当確」出せる納得の訳 メディアの出口調査はどう活用されているのか
A候補の得票率の求め方
それではテレビ局による出口調査の結果から作った正規分布曲線をもとに区間推定してみましょう。区間を求めるには、下の図のaとbを求めればよいことになります。aとbの値がわかれば、95%の確率でA候補者の得票率がaとbの間に収まることになります。
区間推定を使ったaとbの求め方
95%の信頼区間についての式
aとbの値を求めるための公式は上の図の通りです。この公式の導き方については難解ですので今回は紹介にとどめます。この公式のrに出口調査でわかった得票率55%(0.55)を、nに調査人数の1000人を代入します。すると、a≒52%、b≒58%という値が導き出せます。
この結果は、得票率が52%~58%の範囲のとき、正規分布曲線と横軸との間の面積が95%になることを示しています。正規分布曲線と横軸で囲まれる部分の面積は確率を表す性質があるので、A候補は95%の確率で、どんなに少なくても得票率が52%になることが予測されます。言い換えると最低でも52%ということは半数の50%を上回っていますので、A候補は当選確実と判断できるのです。
誤判定を防ぐためには
ただし、あくまでも予測は予測です。この場合は予測の精度が95%の確率という前提です。ですから、すべて開票したら結果が異なったということもあり得ます。数は少ないですが、たとえば2017年の衆議院選挙でも誤った当落判定もありました。そうした誤判定を防ぐために、「区間推定」と「正規分布曲線」を用いた推定では偏りのあるデータを使用しないことが重要とされています。
選挙速報の出口調査でいえば、予想と実際の結果に違いが起こらないようにするために、A候補の出身地や支持者が特に多い地域といった得票に偏りが出そうなエリアは避けたり、数多くの地域から無作為に調査の対象者を選んだりするなどの工夫が求められます。
このように、統計学という数学の知識を活用することで開票0%で「当確」かどうかをつかむことができるのです。断片的な情報から「数学」な考え方を用いてすべての結果を予測することで、人々が知りたい情報を少しでも早く、高い精度でお伝えすことができるのです。「数学」は未来を予測して社会の役に立っている学問でもあるのです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら