さて話を、もう一度アメリカ株に転じたい。同国株の代表的なS&P500種指数は2022年初から約19%下落した(12月16日時点)。
2022年を振り返ると、「アメリカ株は『懸念すべき投資先』になりつつある」(1月23日配信)では、同国株について慎重な姿勢を筆者は示した。インフレ警戒姿勢を強めるFRBの政策への懸念が高まるとみたからである。
実際には、FRBによる利上げは歴史的な急ピッチで進んだ。これは、年初時点でのほとんどのエコノミストの想定を超えるペースで、筆者が想定していた利上げペースも同様に甘かったのだが、FRBの政策が引き起こす金利上昇が株式市場の調整要因になる、との相場観は間違っていなかったようだ。
その後、2月以降のウクライナ危機の混乱を経て、同指数は6月中旬までに年初来下落率が約24%までに達した。かなりの調整となったことで、「年末までに底入れを探る」と若干ながら前向きに考えた(「アメリカ株の底入れ時期がようやく見えてきた」、6月26日配信)。
ただ、その判断は時期尚早だった。インフレが鎮静化しないことから慎重な姿勢を再度強め、8月に株価が大きく反発した時点では、下落リスクを再び指摘した(「アメリカの『夏の楽観相場』はいつまで続くのか」、8月19日配信)。同指数は、その後再び年初来安値を下回る水準まで調整した。
FRBの政策対応とインフレへの思惑で株価が下落した1年だったが、アメリカ株は長期金利の変動に沿って動いてきた。先に紹介したように、インフレがやや落ち着く兆しが見られているのはグッドニュースであり、10月中旬から株価が戻しているのは妥当だろう。
とはいえ、短期的には先述のとおり、FRBの政策転換への期待が再び揺らぐ可能性が残っている。今後、債券市場が再び不安定化するリスクは軽視できず、当面の株安要因になりうる。
業績下方修正で2023年の米国株は2022年安値更新も
一方、2023年央には、FRBは利上げ打ち止めに転じるとみられる。利上げの終着点が見えてくれば、株式市場に好意的に受け止められる可能性もある。
それでも、利上げ打ち止めへの期待だけでは、同国株がすぐさま上昇しない可能性がある。金融引き締めの効果はタイムラグを持って、実体経済に悪影響が及ぶためである。利上げの効果が今後、2023年央にかけて強まるリスクがある。
すでに同国の経済成長率は減速している。だが、株式市場で想定されている企業業績は下方修正されているものの今のところ限定的で、足元で起きている景気減速も十分反映していないとみられる。そして、2023年に予想される、経済の大幅な下振れがもたらす企業業績の下方修正が懸念される過程で、2022年10月の年初来安値をうかがいながら再度下落してもおかしくないのではないか。
FRBによる利上げ打ち止め後に、株式市場がどのような推移するかはさまざまな経緯がある。過去を振り返ると、金融引き締めによって景気後退が始まった場合は、景気後退が始まってから株価下落がさらに進むケースが多い。早くても景気後退がはっきりするまで、アメリカ株への投資には引き続き慎重に臨みたいと考えている。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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