FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)は従来の路線を大きく変更、6月15日のFOMC(連邦公開市場委員会)では0.75%の大幅利上げに踏み出した。株価は20~24日の週では反発したとはいえ、「インフレ、金利上昇がどこまで続くかわからない」との不信感の強まりが、一時は主要株価指数が軒並み年初来安値を記録した主たる要因だろう。
5月中旬にFRBの緩和転換への期待から株価がいったん反発した局面などでも、前回のコラム「米国の株価が本格上昇に転じたと見るのは早計だ」(6月2日配信)で懐疑的な立場を示すなど、2022年初から半年にわたって慎重な見方を維持してきた。
ただ、最近の下落によって、S&P500種株価指数の年初の高値から下落率は、直近で最も下落した16日時点では約24%まで拡大、2021年初近くの水準まで調整した。ここまで下落すると、アメリカ株に慎重だった筆者にとっても、割高感は相応に薄れつつあるようにみえる。
なぜFRBが株安に配慮する可能性は低いのか
FOMCの直前に利上げ幅拡大を決めたとみられるFRBは、インフレへの警戒姿勢をさらに強めたが、「インフレ抑制のために程よく経済を減速させる」難しい政策判断を迫られている。こうした中で、株式市場がいわゆるベアマーケットに入ったが、株安に配慮する可能性は低い。
むしろ、多くのFOMCメンバーは、株高が経済成長を押し上げ、人々のインフレ期待が高まることを防ぎたいと考えているだろう。金融市場参加者にとって痛みが大きいさらなる株安であっても、彼らの積極的な利上げ姿勢は変わらない。
また、大幅な利上げを行ったことで、引き締め効果でアメリカ経済が2023年に減速が始まるタイミングが前倒しとなり、軽微ではあるが景気後退に至る可能性は高まったと筆者は考えている。
一方で、この利上げによって、アメリカ経済がどの程度落ち込むかは、足元で起きている「インフレの深刻度合い」に依存するだろう。経済活動のさらなる減速などで、インフレが今後早期に落ち着けば、FRBの現在のインフレ警戒姿勢も和らぐ。それが、株式市場が反転するきっかけになりうるだろうが、それはいつ期待できるだろうか。
アメリカの経済指標を見ると、景況感を示す各種調査はやや低下しており、また住宅部門がはっきり調整しているなど、経済全体では巡航速度付近にすでに減速しているとみられる。労働市場などで昨年までのブーム的な成長の余熱が残っているが、2022年後半には経済成長率は2%を下回るまでに減速するとみられる。
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