アメリカ株の代表的な指標であるS&P500種指数は、昨年12月末から今年初はほぼ横ばいで推移したあと、1月9日からは上昇に転じている。直近は2022年初から続いてきた下降トレンドを脱したに等しい値動きを見せている。
また同国株の上昇は、債券高つまり長期金利低下とともに起きている。アメリカ10年物国債金利は1月11日以降3.4%台と、昨年12月中旬以来の水準まで再び低下している。金利低下を後押ししたのは、インフレリスクの和らぎだ。
3月のFOMCで利上げが打ち止めになりそうな理由
まず、12月分の雇用統計において、平均時給の伸びが事前予想よりも低かった。さらに、同月分のCPI(消費者物価)コア指数が前月比プラス0.3%となり、3カ月連続で2022年央までの高インフレ対比では低い伸びとなった。
労働市場の需給動向と連動性が高い「家賃を除くサービス価格」も、同様に落ち着いた伸びだった。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)にとっていちばんの懸念は、労働市場の逼迫が強まりインフレを一段と押し上げることだ。だが、このリスクが高まっていないことを、賃金・インフレ指標は示している。
一連の指標からは、インフレが完全に落ち着いたとまではいえないものの、FRBによる次回以降のFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)が0.5%の利上げを続ける可能性は低下したといえる。1月以降、FRB関係者からは、今後は会合ごとに0.25%利上げへとペースダウンすることを示唆する複数の発言がみられている。
ただ、失業率は12月時点で3.5%ということからもわかるとおり、労働市場は依然としてかなり底堅い。FRBによる利上げはペースダウンしても、3月会合まで利上げを続けそうである。利上げをいつまで続けるかに関しては「労働市場の回復が続くまで」となるのではないか。
一方、昨年12月時点の利上げ到達点は、大多数のFOMC参加者メンバーが5%超としていた。この政策金利の利上げ到達点は、労働市場の強さが続くことを前提にしたFF(フェデラル・ファンド)金利の想定だとみられる。実際には、労働市場を中心とした経済情勢次第で利上げの到達点は変わりうる。
筆者は5月のFOMCまでに、労働市場において失業率が4%台まで上昇、非農業部門の就業者数の増加幅が月当たり10万人以下まで低下する可能性が高いと予想している。この予想が正しければ、3月会合が最後の利上げとなり、利上げ到達点は現時点でのFRBの想定をやや下回ることになりそうだ。
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