「米国株の反発は長くは続かない」と予想する理由 利上げは3月のFOMCで打ち止めの可能性が高い

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債券市場では、上記のように「FRBの想定ほどは政策金利が上昇しない」との期待が高まった。最近の金利低下の過程で、3月FOMCにおける利上げ停止の可能性が浮上している。ただ、労働市場の底堅さが保たれているため、その可能性は低いとみられる。今後、足元の金利低下ペースがやや早すぎると判断される見込みで、さらなる金利低下は難しいだろう。

冒頭でも述べたとおり、アメリカ株式市場の10月中旬の大底からの反発は金利低下と共に起きている。FRBの利上げの打ち止めが近づき、2022年10月まで続いた金利上昇・株高とは逆に、金利低下と株高が併存する値動きである。

一方、2023年に金利上昇が止まるか、あるいは金利低下基調となっても、これが持続的な株高につながるかについて、筆者は懐疑的である。金利上昇が止まれば、FRBの引き締めリスクが弱まることになるが、一方でこれは将来の経済成長率の低下を意味する。

米経済は景気後退へ、企業業績も想定超の減益リスク

FRBが目指す緩やかな景気減速で済まずに、2022年半ばの急ピッチな利上げによる、経済活動に対する引き締め効果が強まる可能性が高いと筆者は考えている。肝心のアメリカ経済がマイナス成長に至る景気後退となれば、現在アナリストが予想している上場企業の企業業績は、想定よりも減益幅が大きいものになると見込まれる。

そうなれば、今度は金利低下が株式市場の下落要因として意識されるのではないか。2023年央までに労働市場の調整が始まり、景気後退リスクが懸念される状況が訪れるだろう。昨年後半から今年初にかけても何回か見られた「金利低下が株高をもたらす構図」が崩れる可能性がある。このため、金利低下を受けたアメリカの株価反発は「ベアマーケットラリー」(弱気相場の中での一時的な上昇局面)の域を出ることは難しいだろう。

なお、1月17~18日に行われた日本銀行の金融政策決定会合では、政策修正への観測が高まっていたが、現状の政策維持が決定された。「長期金利を抑制する政策を続けることは困難」は自作自演ともいえる市場参加者の思惑だが、それが大手メディアの報道によって増幅されたにすぎなかったということだろう。

前回のコラム「2023年の米国株価は22年安値を下回る懸念がある」でも述べたとおり、12月の予想外の政策見直しについては、金融緩和の持続性を強める対応であり、金融引き締めへの転換にはつながらないと筆者は考えた。この解釈は間違いではなかっただろう。

12月後半以降は、日銀への政策変更への思惑から円高が急ピッチに進み、日本株の上値を抑えていた。日銀の政策をめぐる行きすぎた期待は、いったん落ち着きそうだ。可能性は低いと筆者は考えているが、仮に黒田日銀体制の大転換を示唆する執行部人事となれば、再び円高が進むリスクが想定される。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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