アメリカの「夏の楽観相場」はいつまで続くのか FRBは「インフレ警戒姿勢」を簡単には解かない
アメリカの株式市場にとっては、これまでは高インフレが続くことが経済成長の不透明感以上に、警戒されてきたと言える。
その理由は、高インフレが家計の実質ベースの所得を減らし消費支出を抑制するだけでなく、長引けば、インフレを鎮静化するためにFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の金融引き締めを強化せざるをえなくなり、将来の経済活動を失速させるリスクが高まるためだ。仮に、FRBがインフレ制御に失敗すれば、1970年代から1980年代前半のような「高インフレの常態化+成長停滞時代」が再来しかねない。
FRBの利上げ効果がようやく出始めた
ただ以下のとおり、FRBのこれまでの大幅な利上げによる、インフレ抑制対応は、遅ればせながらも効果が出てきているとみられる。
2022年に入ってからのFRBの急ピッチな利上げによって、住宅ローン金利が上昇している住宅部門では、販売も着工件数も大きく減少している。さらに住宅部門の調整の余波が、最近の個人消費にも及び始めたとみられ、春先まで堅調だった個人消費は年率+1%ペースに「程よく」ブレーキがかかっている。
FRBのインフレ抑制対応は後手に回ったと批判されているが、金利上昇を通じた引き締め・抑制効果は、依然過熱状態にある労働市場にも及び始めている。
8月10日に発表された、同国の7月CPI(消費者物価指数)はガソリン価格の低下で全体が横ばいとなり、いわゆるコア指数でも前月比+0.3%と、3月以来の低い伸びになった。
単月のインフレ指標のみで判断するのは早計だし、いわゆる基調インフレ率は高い伸びが続いている。だが、CPIの鈍化は最近の経済活動の減速に伴い、昨年以来続いてきた高インフレが和らぎ始めた兆しとみられる。昨年末からのFRBの引き締め転換で、経済が減速すれば総需要とともにインフレが抑制されるが、この効果が表れ始めたということである。
一方、同国の雇用統計で示された平均時給は、7月に再び高い伸びへと加速するなど、労働市場の過熱状態は続いており、賃金は依然として「スピード違反」である。だが、平均時給を就業セクター別にみると、コロナ禍によって人手不足が深刻で大きく平均時給が上振れていたレジャー・対人サービス業で、賃金上昇率の鈍化がみられている。コロナによって人手不足が顕著だった業界で、高賃金が和らぎつつある兆しがある。
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