アメリカの「夏の楽観相場」はいつまで続くのか FRBは「インフレ警戒姿勢」を簡単には解かない
こうした中で、アメリカ株市場は、S&P500種指数が6月の大底である3666ポイントから大きく反発、約17%も上昇した(8月16日時点)。一方、ちょうど逆に6月中旬から下落に転じた原油価格の指標であるWTI先物価格は直近では1バレル=90ドル付近へと、20%以上も下落している。
これは、アメリカ国内でもガソリン販売価格が大きく低下して、高インフレが定着するとの懸念が和らいだことが大きかった。ウクライナ情勢は依然膠着状態のままとみられるが、この地域からの1次産品の供給減があっても、世界的な需給バランスがほぼ均衡するとの見方が増えた模様で、原油だけでなく各種の穀物価格などが2月のウクライナ危機発生前の水準まで戻っている。
高インフレ長期化懸念薄れても、金融引き締めは継続
一方、アメリカの10年国債金利が6月中旬の3.4%台から、8月に入って2.8%付近まで低下しているのは、原油価格などの商品市況が落ち着いたことによってインフレ懸念が和らいだことが、主たる要因と筆者は考えている。
そして、アメリカ株の6月中旬からの大幅反発の大部分は、10年国債の金利低下が示すように、高インフレが長期化する懸念が和らいだことで説明できると思われる。この市場の期待が、7月CPIの下振れによって強まり、8月中旬のアメリカ株は反発にさらに拍車がかかった、ということだろう。
ただ、最近のCPIの下振れは「高インフレがやや和らぐ」という評価は可能だとしても、FRBの2023年初までの利上げ路線が変わる可能性はかなり低い。FRBが「インフレの最悪期は過ぎつつある」と判断しても、6月のFOMC開催時にドットチャートで示されたとおりに、今後、FRBは政策金利であるFF金利を年内少なくとも残り1%(100ベーシスポイント)は引き上げるとみられる。FRBの利上げ見通しを反映する、アメリカ2年国債金利は、6月時点から高止まりしている。
最近、FRB高官が言及しているように、基調インフレ率は依然として4%を超えているとみられ、2%インフレへの鎮静化が近づくまで、引き締め政策は続きそうだ。この対応は、少なくとも2023年まで続き、FRBのインフレ警戒姿勢は簡単には和らがないだろう。
こうした中で、今後、FF金利が少なくとも3.5%前後まで引き上げられる過程で、10年国債などの長期金利がさらに低下する余地は低いとみられる。また、9月からのQT(量的引き締め政策)の影響が強まることも、長期金利の上昇圧力になる可能性がある。
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