アメリカの「夏の楽観相場」はいつまで続くのか FRBは「インフレ警戒姿勢」を簡単には解かない

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FRBにとっても、さらなる株高が続けば、それが資産効果として「程よく」減速し始めたばかりの個人消費を再び刺激する。インフレ抑制を最優先とする政策対応の中で、株高によって経済活動が再び過熱するのは望ましい状況ではない。今後FRBは長期金利が低いことへの警戒感を強めると思われる。

FRBと市場の駆け引きは年内継続、楽観は今後修正へ

仮に株高が続けば、FRBは利上げ幅をさらに引き上げる姿勢をみせるなど、9月20~21日のFOMC(連邦公開市場委員会)にかけて、政策対応が再び動く場面が想定される。

つまり、FRBのインフレ抑制最優先姿勢が確認されない2022年末まではFRBと金融市場の駆け引きが続くのではないか。このため、高インフレの最悪期が過ぎつつあるとしても、年末までは、株式市場の方向は上下に振幅する可能性が高い。筆者は「アメリカ株の底入れ時期がようやく見えてきた」(6月26日配信)で、2022年年末にかけての株価底入れの可能性を指摘したが、最近の株高のピッチは速すぎるようにみえる。

また、2四半期連続でマイナス成長となったGDPはやや過大に経済悪化が示されているが、これまで説明しているとおり、経済情勢は緩やかに減速していると判断される。

4~6月決算発表期について、企業アナリストによる業績(予想1株当たり利益)の下方修正幅は、筆者が従前予想していたよりも小幅にとどまった。依然、多くのアナリストによる業績予想は、経済が減速しつつある中で、楽観的なようにみえる。今後、企業業績が下方修正されることも、アメリカの株高を抑制する要因になるとみられる。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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