「暴飲暴食をリセット」疲れた胃を軽くする養生法 スパイス効かせた「マイお屠蘇」で体ポカポカ

✎ 1〜 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

屠蘇が漢方薬だと知ったのは、漢方を勉強し始めてからです。「屠蘇散」は三国時代の名医、華佗(かだ)の処方で、『千金方(せんきんほう)』という漢方の医学書に記載されています。

屠蘇は、「蘇」という悪鬼を屠(ほふ)るという意味です。これを元旦に飲むことによって疫病にかからない、予防と治療を兼ねたものでした。本来の処方には、烏頭(うず)や大黄など作用の強い生薬が配合されています。烏頭は殺人事件にも使われたトリカブトの根ですし、大黄は便や滞った血(けつ)を排出する生薬です。

正月に屠蘇を飲む風習は、平安初期に中国から日本へ伝えられ、主に宮中で行われてきたそうです。3日間続く儀式では、一献は屠蘇、二献は白散(びゃくさん)という漢方薬、三献は度嶂散(どしょうさん)という漢方薬が献上され、3日目にはあらゆる皮膚病を予防するとされる千瘡萬病膏(せんそうまんびょうこう)が献じられたそうです。

屠蘇散を元旦に飲む習慣は、江戸時代には庶民の間でも流行したそうですが、飲みすぎる人もいて、多くの中毒患者を出したそうです。それからは烏頭や大黄など作用の強い生薬は抜かれ、縁起物として定着しました。

「マイお屠蘇」の作り方

『千金方』の屠蘇酒の条文には、次のような飲み方が書かれています。

【屠蘇の準備】大晦日の晩に屠蘇散が入った三角形の赤い布袋を井戸の内側に吊るして1晩置きます。元日の早朝に取り出して、酒もしくはみりんに5~7時間浸します。現代で井戸のある家はほとんどありませんから、大晦日の夜に1合の日本酒かみりんに浸しておき、元日の朝にいただきます。

【屠蘇の飲み方】元旦、家族全員そろって新年の挨拶をしたあと、雑煮やおせち料理をいただく前にお屠蘇を飲みます。東の方角を向き、年少者から年長者へと順に盃を進めます。通常の酒席とは逆の順番ですが、これは“若者の気を年長者に分け与える”という意味合いが含まれているのだそうです。

【三が日のならわし】正月三が日の来客には、初献に屠蘇を勧めて新年のお祝いのあいさつを交わすのが礼儀とされています。千金方には「一人が飲めば一家が、一家が飲めば一里が病にかからない」と書かれています。

【屠蘇を作ろう】屠蘇は市販されていますが、身近な食材で作ることできます。自分だけの「マイお屠蘇」を作ってみてはいかがでしょう。

用意するのは、スパイス売り場にある、桂皮(シナモン)や丁字(クローブ)、陳皮(みかんの皮)、山椒(さんしょう)、生姜(ジンジャーパウダー)など。これらをひとつまみずつ、ほぼ同じ量を混ぜて、小さなお茶パックなどに入れます。1合の日本酒かみりんに浸しておけばできあがります。スパイスの組み合わせは自由ですが、陳皮を多めにすると飲みやすいです。

生姜や陳皮をはじめ、どれのスパイスも胃腸の働きを助ける生薬ですので、多めに作って年末年始の食べすぎに備えてもいいかもしれませんね。

生薬を活用して、よいお年をお迎えください。

平地 治美 薬剤師、鍼灸師。 和光鍼灸治療院・漢方薬局代表

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ひらぢ はるみ / Harumi Hiraji

東洋鍼灸専門学校非常勤講師、日本東洋医学会代議員。朝日カルチャーセンター、津田沼カルチャーセンターなどで漢方関連の講座を担当。明治薬科大学薬学部卒業後、漢方薬局勤務を経て、東洋鍼灸専門学校に入学。漢方治療の大家である寺師睦宗氏に漢方を、石原克己氏に鍼灸を、クリシュナU.K氏にアーユルヴェーダ医学を学ぶ。著書に『げきポカ』(ダイヤモンド社)、『舌を見る・動かす・食べるで健康になる』(日貿出版)など。You tube「平地治美・漢方チャンネル」も開設。ブログ「平地治美の漢方ブログ」。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事