「暴飲暴食をリセット」疲れた胃を軽くする養生法 スパイス効かせた「マイお屠蘇」で体ポカポカ

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消導薬は消食薬や消化薬ともいわれ、消化を促進させる生薬です。食べすぎや消化不良によって起こる、腹満や腹痛、悪心、嘔吐、食欲減退、曖気(おくび・げっぷ)、呑酸(どんさん・胃液の逆流)、便秘や下痢などに用いられます。

代表的な消導薬に、肉や脂を使った食べ物の消化によいといわれている山査子(さんざし)があります。中国では、保和丸(ほわがん)や健脾丸(けんぴがん)など、山査子が配合された漢方薬があります。

山査子が日本に入ってきたのは江戸時代中期とされますが、あまり使われていませんでした。江戸時代まで肉食はあまりされなかったというのが理由の1つかもしれませんが、近年は日本の食生活も欧米化が進み、肉料理や油脂を使った料理が増えていることを考えると、今後見直されていく生薬の1つではないかと思います。

山査子は、バラ科サンザシ属の果実で、サクランボのような実を生で食べると甘酸っぱい姫リンゴのような味がします。冬の中国の街角では、山査子を数個、串刺したものがよく売られています。山査子を餅状にした菓子である山査片も同様の目的で用いられ、日本でも果汁を加工したピンクの板状のものが売られています。

山査子は体を少し温める性質があり、消化機能を促進し、血行をよくします。脂肪分解酵素が含まれるため、とくに肉や油っこいものの消化を助けます。中国では消化を助ける効能が一般的によく知れわたっているため、肉料理などの後に食べることが多いようです。薬というより食品として広く利用されています。

このほか、陳皮(ちんぴ)、ゆずもおすすめです。

陳皮は、温州みかんの成熟した果皮です。気のめぐりをよくする理気(りき)薬の1つで、消化吸収機能を整えたり、余分な湿気を取り除いて痰をとったりしてくれます。陳皮の「陳」は古いという意味で、陳皮は古ければ古いほど黒くなり、効果があるとされています(芳香性は新しいもののほうが優れています)。

ゆずの皮には陳皮と同じような作用があります。実の部分は滞った気の流れをスムーズにして胃腸の機能を助け、痰をとってくれます。解酒毒といって体にこもった熱や疲労を和らげ、二日酔い対策にもなります。

お屠蘇は漢方薬の1つ

ところで、皆さんは正月にお屠蘇を飲まれますか?

薬局を開局して以来、年末にいらした患者さんにここで作ったお屠蘇を差し上げるのを恒例にしています。江戸時代の漢方医も、年末に薬代の返礼として、お歳暮代わりに屠蘇を渡していたとか。

少し前になりますが、宝酒造が行った「お屠蘇に関する意識調査(2012年実施)」によると、「お屠蘇を飲む慣習の由来や意味を知っている人はわずか2割」 という結果だそうです。若い世代になるともっと低い数字になると予想されます。

以前に教えていた専門学校で10代の学生に質問したところ、屠蘇という言葉を知っていたのは、14~15名中1人だけでした。今、正月にお屠蘇を飲むという家はほとんどないのかもしれません。私自身も漢方を勉強するまでは言葉だけは知っていたものの、正しい意味は知らず、「正月に飲むお酒のこと」ぐらいに思っていました。

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