ティム・クックが熊本の小学校視察で驚いたワケ アップルと熊本を結びつける3つのキーワード

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12月13日、ティム・クックCEOと、ワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントのグレッグ・ジョズウィアック氏が訪問したのは、熊本市立五福小学校の3年1組の教室。国語の授業で教科書の『もちもちの木』を音読する授業だった。同校は4年前からiPadを用いた授業に取り組んできた。

3〜4人のグループで音読をiPadに録音し、無料音楽編集アプリ「GarageBand」を使って、ストーリーを盛り上げる音楽を選んで完成させるというもの。自分が読み上げた音声を聞いて客観的にとらえ、グループごとに読み方を工夫し、また音楽選びも相談し合って、音読のプロジェクトを完成させていく。クック氏とジョズウィアック氏も、教室での発表に拍手を送っていた。

クラスの担任を務める荒川美穂子教諭は、音読の練習という単元で、iPadを用いてより自由度の高い「表現」に挑戦してもらうことを目指しているという。「iPadを用いて録音できる、音楽を重ねられる、というツールの習熟の話ではなく、なぜそのように読んだのか、なぜその音楽を選んだのか?という部分がより重要」と語り、創意工夫を教室の中で共有することを学びとしていた。

教員たち同士の研究やノウハウ共有で充実

国語の授業でタブレットを生かす様子は、少し意外にも見受けられる。調べ学習がある社会や、実験を伴う理科の授業でのタブレット活用の例は多いが、国語の授業でここまで深く活用されている例は珍しい。

熊本市教育長の遠藤洋路氏は「国語で活用できてこそ」と強調する。国語は日本の学校教育の中での基礎となっており、今後デジタルを前提とした教育を考えるとき、同じ基礎同士で活用方法を見いだすことを重視していたからだ。

担任の荒川氏に聞くと、学校内でも教科の専門や学年を超えて、先生同士での活用の研究やノウハウ共有が活発に行われているという。こうした活用はうまくいった、ここが難しかった、こんなアイデアがあるのではないか? 放課後の時間の情報交換で新しい、子どもたちの学習がより充実する方法が生み出される。

同様にiPadを導入している市内の他の学校の先生との交流も盛んで、市内のさまざまな取り組みや気づきが、熊本市の教育全体をより洗練されたものへと作り替えるようになった。

そうして実践されてきた熊本市の教室を見て、クック氏は次のように語った。

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