中国電池CATLが「船の電動化」に取り組む背景 新設子会社で関連技術やアプリケーション開発

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船舶の電動化は水運業の脱炭素に寄与する技術として期待を集める。写真はCATLの船舶向け電池システムを搭載したクルーズ船(同社ウェブサイトより)

中国の電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が、船舶の電動化を推進する新会社を設立したことがわかった。

同社は11月26日、1億元(約19億5000万円)を出資して完全子会社の「寧德時代電船科技」を設立。CATLは11月30日に財新記者の取材に応じ、新会社では「船舶の動力向け電池システムの関連技術、製品、アプリケーションの開発に取り組む」と明らかにした。

現在のCATLの主力製品は、EV(電気自動車)向け電池と(再生可能エネルギー発電による電力を一時的にためる)蓄電システム向け電池だ。さらに近年、同社は(新たな事業分野として)船舶の電動化の模索を続けてきた。社内事情に詳しい関係者によれば、CATLは2017年から船舶向け電池の開発に着手。2020年には長江の中流域で、初の船舶向け電池システムを搭載した電動船の進水式が行われた。

CATLの動きの背景には、中国政府が船舶や水運業の「脱炭素」を推進しようとしていることがある。中国の産業政策を所管する工業情報化省は9月28日、関係する5省庁と連名で河川舟運の「グリーン動力化」の振興を提唱。有力な選択肢の1つとして電動船を挙げた。

河川や近海の水運に商機

「中国には河川や湖で使われている船だけで数万隻ある。そのなかでも大型の船舶は、電動化により大量の電池を必要とするため、電池メーカーにとって新たな事業機会になりうる」。ノルウェーの国際的な船級協会、DNVの中国地区ビジネスマネジャーを務める陳建新氏は、財新記者の取材に対してそう述べた。

陳氏によれば、中国ではCATLのほかにもEV大手の比亜迪(BYD)や電池大手の億緯鋰能(EVEエナジー)などが、船舶向け電池の事業化に向けた布石を打っているという。

本記事は「財新」の提供記事です

水運業の脱炭素に向けた技術に関しては、電池だけでなく水素、アンモニア、メタノール、合成燃料、バイオ燃料など、複数のアプローチが模索されている。

「これらの技術にはそれぞれ長所と短所がある。電池式や(電池とエンジンを組み合わせた)ハイブリッド式に関しては、河川舟運や近海海運向けの船舶に向いている。これらの船舶は(相対的に短距離の)決まった航路を運航しており、充電の利便性が高いからだ」。交通運輸省水運科学研究院の首席研究員を務める彭伝聖氏は、そんな見方を示した。

(財新記者:安麗敏、包志明)
※原文の配信は12月1日

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