鼻茸ができると副鼻腔の出入り口がふさがれるため、病気が治りにくくなる悪循環が生じる。鼻づまりもひどくなり、QOL(生活の質)も低下する。一度できた鼻茸を薬で治すことは難しく、内視鏡で鼻茸を切除したり、副鼻腔の中を洗ってきれいにしたりする手術を行うしかない。
30年ほど前まで、この手術は内視鏡ではなく、歯ぐきを切ってほほの骨をノミで削り、副鼻腔にたまった膿や粘膜を取り出す方法で行われていた。手術後に顔面が腫れるなど、体への負担が大きい手術だった。
手術は指導医がいる医療機関で
「今は、内視鏡による手術は鼻の穴の中から器具を挿入して行う治療で、顔に傷をつくることなく行うことができます。昔の手術とは格段の違いですよ」
ただし、副鼻腔は脳の真下や眼球のすぐそばにあるので、「決して簡単な手術ではない」と寺田さん。
「稀にですが、視力低下や複視、髄液漏などの合併症が起こっています」と話す。このため、手術を受ける場合は、内視鏡手術の技術を持つ「日本鼻科学会認定手術指導医」のいる医療機関が勧められるという(日本鼻科学会認定手術指導医のリストはこちら)。
「これから寒くなり、風邪のシーズンになりますので、副鼻腔炎によくかかる人はぜひ、予防を。予防策として鼻うがい(※)をお勧めします。また、むし歯や歯周病で口の中の細菌が多いと副鼻腔炎を起こしやすいという報告もありますので、定期的に歯医者に診てもらうことも大事でしょう」
①人肌の温度にした水200ミリリットルに塩を2グラム程度入れて溶かす(0.9%の食塩水)
②片方の鼻の穴に食塩水を流し込んだら、鼻や口から出す
※上を向いて鼻うがいをしないように注意
後編では、一部が国の指定難病になっている難治性の慢性副鼻腔炎、「好酸球性副鼻腔炎」について紹介する。
(関連記事:【治らない副鼻腔炎】実は指定難病、嗅覚低下も)
(取材・文/狩生聖子)
寺田哲也医師
1992年、大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)卒。同大耳鼻咽喉科学教室入局後、京都民医連中央病院耳鼻咽喉科医長、アメリカ留学などを経て、2007年、洛和会音羽病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長。2015年から大阪医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室准教授。専門は免疫アレルギー、副鼻腔疾患、頭頸部腫瘍疾患。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本アレルギー学会指導医、日本がん治療認定医。日本鼻科学会認定手術指導医
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