空洞になっていることで、重い脳を支える頭蓋骨を軽量化したり、鼻の中の温度を調節したり、音声を共鳴したりといったところで役立っていると考えられている。
この副鼻腔の入り口はとても狭いため、風邪のウイルスなどにより、鼻の粘膜が炎症して腫れるとたちまち入り口がふさがれ、密閉状態になってしまう。空気の出入りがなくなれば、細菌やウイルスにとって繁殖しやすい環境となる。
病原菌が繁殖して活発になると、体の防御反応によって免疫細胞の白血球が集まり、病原菌を殺そうとする。この結果、炎症反応が起こり産生された炎症物質や病原菌の死骸が黄色い膿となって出てくる、というわけだ。
「膿は黄色い鼻汁となり、鼻の入り口ではなく、多くはのどに落ちていく。痰として出てくることもあり、『後鼻漏(こうびろう)』と呼ばれています」(寺田さん)
つまり、黄色い鼻汁と後鼻漏が急性副鼻腔炎のサインとなる。
後鼻漏が起こるのは、副鼻腔の出入り口にあたる中鼻道の粘膜に存在する、「繊毛(せんもう)」の働きによる。
「繊毛を顕微鏡で見ると、刷毛のような動きで、膿などの異物を外に排出しています。繊毛は動く方向が決まっていて、鼻の前方に向かってではなく、後ろのほうへ移動させていくのです」(寺田さん)
そのため、鼻汁が喉の奥に流れていくのだという。
ちなみに、風邪の初期やアレルギー性鼻炎のときに出てくる鼻水、いわゆる水っぱなは、鼻の入り口付近の下鼻甲介(かびこうかい)の粘膜が発生源。こちらの鼻水は前方にだらだらと出てくるのが特徴だ。
骨が溶けるのは実は「本当」
急性副鼻腔炎では、炎症が目の神経(視神経)に及ぶと、視力が低下したり、物が2つに見える「複視」の症状が出ることがある。
インターネットなどには、「副鼻腔炎になると骨が溶ける」という話が都市伝説的に書かれているが、寺田さんによると、「副鼻腔内で真菌(カビ)が繁殖して起こる『副鼻腔真菌症』という病気があり、このうち『浸潤型』というタイプでは、骨が溶けることはあります」とのこと。都市伝説ではなく事実、ということだ。
誤解のないように言っておくと、骨が溶けるのは、炎症によって骨の細胞が破壊され、再生がうまくいかなくなるため。専門的には「骨吸収」と呼ばれている。
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