「遺伝子組み換え」目を背ける日本が知るべき現実 広がる世界とのギャップ、食料危機にどう対応?

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食べたくないものを無理してまで食え、というつもりは毛頭ない。だが、地球温暖化とウクライナ情勢によって、日本の食料安全保障が脅かされていることは事実だ。そこに、世界人口が80億人を超えて増え続ける現実も重くのしかかる。

これまでは日本の穀物の生産性の向上はアメリカが許さなかった。農業大国のアメリカの市場として戦後の日本が機能したからだ。

世界的な食料争奪戦にどう対処するのか

高度経済成長を目指した日本にとっても、アメリカから穀物を買い付けたほうが合理的だった。それで自給率は低下の一途をたどり、アメリカ依存の体質ができあがっていった(『日本の食料自給率向上を「米国が絶対許さない」訳』参照)。

だからこそ、アメリカ企業がGM作物の種子を積極的に日本に売り込むこともなかった。むしろ、それこそ国益に背くことにもなったからだ。それよりは、日本人のGM嫌いをそのままに、わざわざ輸入許可のための圃場まで作って、大量の海外産のGM穀物を日本に送り込んできた。それが商業戦略だった。

いままではそれでよかった。しかし、日本の現状からしてみると、確実に食料価格は高騰し、場合によっては買えないことも想定しなければならない。例えば、中国との食料争奪戦に買い負ける事態だ。異常気象は物量そのものを不足させる。そこでは供給国の事情に揺さぶられざるをえない。

世界の潮流を見据えれば、国内生産も検討の余地として、少なくともGM種についての独自の知見くらいは必要だ。危機に対処するインテリジェンスとは、そういうことだ。そうでなければ、日本が世界から取り残されていく。

青沼 陽一郎 作家・ジャーナリスト

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あおぬま よういちろう / Yoichiro Aonuma

1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。

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