「遺伝子組み換え」目を背ける日本が知るべき現実 広がる世界とのギャップ、食料危機にどう対応?

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だが、日本国内で農家がGM作物を作付けている現実はない。その根本的な理由は、日本人のGM作物に対する警戒感、抵抗感であることは、関係者の一致する見解だ。農家が生産したところで、買ってくれる相手がない。買ってもらえないものを生産しても商売にならない。

GM作物がアメリカで本格的に生産され、食品として市場に登場してきたのは、1996年のことだった。それから四半世紀が経つ。その間に供給元の生産量も増え、日本人が消費する量も必然的に増した。Z世代はおおむね生まれたときからGM作物を摂取してきたことになる。それでも日本人の抵抗感は根強い。

仮に、国内のある農家が1戸だけGM作物を作付けたとしても、近隣の農家がそれで迷惑するという。地域そのもののイメージが悪くなるというのだ。そうしたこともあって、北海道や東京都などの12都道府県と2市では、作付けには自治体の首長の許可が必要とする条例を設けている。そこまでして規制している。

開発メーカーも「日本での販売予定はない」

GM作物を開発、種子を販売している側も「日本での販売予定はない」(バイエル クロップサイエンス)としている。ニーズがないだけでなく、販売には手間がかかるからだ。

例えば、ラウンドアップで枯れない大豆を日本で栽培しようとすれば、農薬としてのラウンドアップの適用拡大の承認を得なければならなくなる。生育中の大豆にラウンドアップを散布する使い方など従来はなかった。その使用用途を登録しなおす必要がある。農林水産省が栽培を認めても、農薬の登録手続きがなければ、付加価値を生かすこともできない。

ところが、海外に目を向けると、むしろGM作物の需要が高まっている。その典型が地球規模での異常気象に対処するため干ばつに強いGM小麦の登場だ。

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