「遺伝子組み換え」目を背ける日本が知るべき現実 広がる世界とのギャップ、食料危機にどう対応?
アルゼンチンのバイオセレス社(Bioceres Crop Solutions)が、干ばつに強いヒマワリの遺伝子を導入した世界で初めてのGM小麦を開発した。すでにアルゼンチンで栽培されているばかりでなく、ここへきてアメリカの食品医薬品局(FDA)が「安全性について、これ以上の疑問はない」と結論づけて食品および飼料として承認したほか、ブラジル、オーストラリア、ナイジェリアなどでも食品や飼料として承認されている。
主食となる小麦のGM種はいままで地球上にはなかった。それがいずれ、アメリカで本格的な商業栽培が認められて日本に入ってきたとしても、なんら不思議ではない。
むしろ、GM種でないものを選り好みしていたのでは、干ばつで日本に小麦が入ってこなくなる可能性も出てくる。GM種を使ったパンやパスタ、うどんを日本人が食べる日が近いと覚悟したほうがいいかもしれない。そうでなくても、現在の国際情勢は食料の争奪を余儀なくさせている。
ケニアはGM作物の栽培・輸入を解除
同様の技術で干ばつ耐性の大豆も開発された。アメリカやブラジルを含む南北アメリカの複数の国々で栽培や食品、飼料としての利用が承認され、今年になって中国でも食品や飼料としての利用が認められている。米中冷戦を背景に、中国はブラジルを中心に世界中から穀物を買い漁っている。
また、GM作物に対する抵抗が強かったアフリカでも、生産する国が増えている。2018年には3カ国でしか栽培されていなかったものが、翌2019年には6カ国になった。ロイヤリティーフリーによる干ばつ耐性、害虫抵抗性のGMトウモロコシを提供しようという官民のプロジェクトが進められたことが大きい。
直近では、今年9月に就任したばかりのケニアのウィリアム・ルト大統領が、過去10年間にわたってGM作物の栽培と輸入を禁止していた法律を事実上廃止すると発表。継続する干ばつと食料安全保障の強化のためだとしている。つまり、異常気象と世界情勢の変化に対応するため、背に腹は代えられない事情が後押ししている。
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