「遺伝子組み換え」目を背ける日本が知るべき現実 広がる世界とのギャップ、食料危機にどう対応?
それともう1つ、私がこの圃場を訪れて目についたのは、真夏の空に真っ直ぐに人の背丈を超えて伸びていたトウモロコシだ。それも、害虫が取り付いて茎や実を齧って食べたら死んでしまう。だが、人が実を食べても影響はなく、殺虫剤が必要ない。害虫抵抗性の「Btコーン」と呼ばれるGM種だった。
ここでは日本の「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」に基づき、試験栽培することで、生物多様性と環境への影響を評価している。これを国に報告することによって、同じ作物の輸入の許可が下りる。そうでないと、大豆やトウモロコシを輸入に頼る日本の食料供給は成り立たない。供給元のアメリカなどでは、これらのGM種の作付けが圧倒的に主流となっているからだ。
食用油やしょうゆなどに使われているGM種
業界企業などでつくる日本のバイテク情報普及会によると、2019年に日本に輸入された大豆339万2000トンのうち、アメリカやブラジルなどの相手輸入国の作付面積から、94%にあたる317万8000トンがGM種であると算出されている。トウモロコシでは、1598万3000トンの輸入のうち91%の1447万6000トンとされる。同年の大豆とトウモロコシの日本の自給率はそれぞれ6%と0%だった。
こうしたGM種は主に食用油やしょうゆ、コーンスターチに加工されたり、コーンシロップなどの甘味料として清涼飲料水などに加えられたりして日本人は摂取している。あるいは、国内畜産業の飼料として大量に使われる。それもこれも、GM種を提供する企業の隔離圃場が国内にないと、輸入はできないのだ。
カルタヘナ法に基づき、日本国内で一般的な使用が承認されたGM種は、2022年5月27日現在、トウモロコシや大豆を含めた10種類198品種ある。しかも、ここで意外なのは、このうち149品種は隔離圃場でなくても、国内での一般の栽培すら農林水産省が認めていることだ。
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