今年(2022年)3月にソウルで開催された世界的グループBTSのコンサート。その終盤でメンバーのV(ヴィ)が「ARMY(BTSのファンの呼称)の皆さんに贈りたい言葉」として選んだ詩集があった。
『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』。「僕がこれからもファンの皆さんを愛します」という意味で発せられたフレーズだった。
韓国では、アイドルや俳優をはじめとする芸能人たちが「お気に入りの詩集」を公言する。ドラマでは詩集(あるいは詩そのもの)が重要な小道具に使われることも珍しくない。
そもそもこの『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』は2005年に韓国で刊行されて以来60万部以上を売り上げ、10年以上にわたって「もっとも売れた詩集」として国民的な人気を獲得してきた。ちなみに2021年の韓国の人口は5200万人弱。日本の人口の約半分だということを考えると、驚異的なベストセラーである。
翻訳家で在韓20年のオ・ヨンア氏に「なぜ、韓国ではこれほどまでに詩が身近にあるのか」ということについてリアルな事情を聞いた。
「言いたいこと」はとにかく声に出す
韓国では老若男女問わず、お気に入りのフレーズや詩を暗唱できる人たちに本当によく出会います。
韓国では詩が人々の身近にあり、なぜ詩が愛されているのかの歴史的な背景については、辻野裕紀氏が解説してくださっているとおりです。
それはちょうど好きな歌や小説をいくつか持っているような感覚に近く、まったくもって特別なものではないようです。
「え、好きな詩人いないの?」ということのほうが不思議がられることも多い。
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