偽善とFIFA会長は喝破、欧州「カタール批判」の矛盾 中東のオイルマネーへの依存度は高まるばかり
カタールでサッカーのワールドカップ(以下、W杯)が開幕したにもかかわらず、ヨーロッパからの批判の声は根強い。開幕前日の11月19日には国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長がかなり強いいらだちとともに批判に反論し、注目を集めた。
FIFAはヨーロッパの選手が準備していた性的マイノリティ(LGBTQ)を支持するアームバンドの着用を禁じ、会場での禁酒も決めた。
ところが、11月23日に日独戦でドイツが敗れた原因について、ドイツの公共放送ZDFは、FIFAにアームバンド着用を禁じられて選手が落ち込んでいたことが原因と指摘。スタジアムで観戦していたドイツの内相がアームバンドを付けていたのが唯一の慰めだったとこだわりを見せた。
西側メディア批判の主な要点は3点で、1つ目は主に南アジア諸国出身のW杯の建設現場で働く外国人労働者が酷使され、死者まで出ていることだ。2つ目はLGBTQが国是として禁止されていることや女性を蔑視している点、3つ目は大規模インフラ整備工事や巨大会場の冷房で大量の化石燃料が使われ、温暖化対策に逆行しているとの批判だ。
「偽善」と断じたFIFA会長
国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティーノ会長は開幕前日の記者会見で、「ヨーロッパは道徳的な教訓を説く以前に、過去3000年間に世界中で行ってきたことについて、今後3000年間謝るべき」と発言。
また「カタールには発展途上国から何十万人もの労働者がやってきている。彼らは自国の何倍もの収入を得て、家族の生活を支えており、しかも合法的な方法でそれを行っている。一方、ヨーロッパは国境を閉じている」と主張し、ヨーロッパからの批判は「偽善」と断じた。
一方、ヨーロッパ側の批判には複雑な背景がある。
中東湾岸諸国は近年、ヨーロッパのクラブチームに巨額投資をくり返している。豊富な資金力で世界中からスター選手を集め、ヨーロッパのサッカーは活気づいている。とくにロシアがウクライナに侵攻したことで、ロシアの富豪の投資が打ち切られる中、湾岸諸国の投資は貴重だ。
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