偽善とFIFA会長は喝破、欧州「カタール批判」の矛盾 中東のオイルマネーへの依存度は高まるばかり
筆者の住むフランスでは、基幹産業である観光で高級ホテルの買収に20年前からオイルマネーが流れ込んでいる。文化面では、ルーブル美術館がUAEとの共同プロジェクトで2017年にルーブル・アブダビを開館した。UAEは30年間「ルーブル」の名を冠する対価としての4億ユーロ(約560億円)を支払う。
この20年間、急接近してきたイスラム圏は、かつてフランスが十字軍を送り込んで大虐殺を繰り広げた敵対関係にあった勢力で、今ではフランス国内で2015年に史上最大規模のイスラム過激派によるパリ同時多発テロが起き、130人が犠牲になるなど、テロの頻発に悩まされている。
ヨーロッパの中東批判に潜む矛盾
今回のカタール大会で台頭するイスラム勢力に対して釘をさす意味で、ヨーロッパは人権問題などで批判を繰り返しているが、経済依存度もエネルギー依存度も、さらには文化スポーツ依存度でも抜き差しならない関係にある。
ヨーロッパの批判は織り込み済みのカタールは、ある程度の改善をすることで評価を高め、国際社会で次のステップにのぼりたい強い意志を持ち、ヨーロッパは警戒感を高めている。
だが、ヨーロッパの中東批判にも矛盾はある。イスラムの伝統を守るカタールでの大会で多様性軽視を批判するヨーロッパは、足元の域内でイスラム教の価値観を批判し、差別している。インファンティーノ会長が想定外の長時間の演説の中で、ヨーロッパのイスラム世界に対する独善的態度と、過去の植民地での人と物の略奪行為を謝罪しようとしない姿勢について「偽善」と言及したのは一理あるといえそうだ。
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