贅沢?子どもに「地方で自然体験」させる深い意味 勉強漬けの毎日では学べないことがそこにある

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(写真:筆者撮影)

MORIUMIUSがユニークなのは、一過性のイベントとしてキャンプ等を経験するのではなく、そこでの暮らしによる循環を生み出そうとしている点だ。化学物質を使用していない調味料や石鹸のみを利用し、調理や入浴につかった後の水は、水路で微生物による分解を促し、ビオトープに流し込み、水田で稲作をする。残飯は鶏や豚に食べてもらいながら微生物の力により堆肥として再び食べ物を育てるのに使用する。

油井さんは「人によって自然環境が壊されるのではなく、むしろ生態系がより豊かになることを体感することを目指している」という。

首都圏のみならず、仙台市や石巻市に住む家庭はもちろん、震災で人口が大幅に減少した雄勝町の子どもでも、このような生活を体験したことがある子どもは少ないそうだ。

MORIUMIUSの油井元太郎代表(写真:筆者撮影)

「灯台下暗しで、地元に資源があるのに、結局田舎の子がそれを享受しているかというとそうでもありません。田舎の子ほど家でゲームをしていたり、漁師の子ほど漁業に従事することがなく、普段から漁船に乗ることが少なかったりする」と油井さんは語る。

MORIUMIUSで油井さんらが目指すのは、移住はしなくても訪れる人が増えることで関係性を深める人が増える「関係人口」の増加と、それによる地元への還元と地域活性化だ。拠点があることで、訪れる人たちによって新しい試みが生まれ、それがまた別の人を呼び込む。子どもが大きくなって別のかかわり方をするようになり、第2のふるさとになる。食べ物の循環だけではなく、人も循環しはじめている。

ここ数年は県内の学校による利用も増え、今年からは日本財団の「渚の交番」プロジェクトのサポートにより年間を通じた漁村留学を開始し、3人の中学生が来たことで地元の同級生たちが遊びに来るなどの交流が生まれているという。雄勝町では地元でバラ園を続けてきた夫婦が中心となり、災害指定区域となり人が住めなくなった低地を畑にする構想も進んでおり、MORIUMIUSも「リジェネラティブ(環境再生)」な農業を実践しようとしている。

豊かな自然を存分に味わう「海の学校」

豊かな自然を体験できる場所は、実は日本には多い。

高知県の西南の端に浮かぶ周囲約4kmの小さな島、柏島。ここに夏休み、愛媛、神戸、東京などから来た親子たちが集まった。NPO法人黒潮実感センターの2泊3日の親子サマースクールのプログラムに参加するためだ。

はじめは海を怖がっていた小学1年生の女の子も、カヌーに乗って魚を見ているうちに、ほかの子たちと一緒に海に飛び込んでいく。「海がちょっと好きになった」と笑顔を見せ、次の日は自ら海に入った。

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