贅沢?子どもに「地方で自然体験」させる深い意味 勉強漬けの毎日では学べないことがそこにある

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夜はその場で海の生物を見つけて捕まえては、センター長で魚類生態学の博士号(農学)をもつ「お魚博士」である神田優さんの豊富な知識による解説がはじまる。

ウニが糞をする様子、フグを怒らせて膨らんでいく様子…・・・毒や棘がある生き物も、専門家がいるからこそ「ここは触って大丈夫」「こういう持ち方をすればいい」と指南を受けられる。

神田優さん(写真:筆者撮影)

豊かな自然を存分に味わい、専門知識に触れる。

「来年も絶対ここに来たい」

「柏島に住みたい!」

子どもたちが口々に言うのに応じるように、中には7年連続で訪れる家族もいるという。

海離れする日本人

もともと高知市出身の神田さんは大学生のころから柏島を調査研究のフィールドとしていた。1998年に「研究のための研究ではなく、教育を含めて、島まるごとを博物館のようにできないか」と廃校を活用して、地元の子どもたちなどに海のすばらしさを伝える活動をはじめた。

神田さんは「内外に柏島のことを発信していく中で、人が来てくれるのはいいことだが、荒らされてしまっては仕方ない。資源を活用しつつ保全していく方法を模索してきた」という。1人でできることには限界があり、「次の世代を育てていきたい」とはじめたのがこのサマースクールだ。

「子どもたちには、まず海って楽しいなとか、きれいだなとか、おいしいなとか五感を使って感じ取ってもらいたい。そうすると、日常に戻った時にも、テレビで今までは無関心だったことにも、アンテナが向くようになる。環境の問題も自分事になって、自分ができることは何かと考えてくれる人が増えれば」と想いを語る。

日本財団が2019年に実施した「海と日本人に関する」意識調査結果では、新型コロナウイルスが蔓延する前であっても、回答者の7割が「海に行きたい」と思っているのにもかかわらず、全回答者の3分の1が「この1年海に行っていない」と回答している。

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