悪質な後見人がいるのは、被後見人の財産を“適切に管理しない”ほうが後見人の利益になるためだ。
後見人の報酬は、被後見人の現金の資産額を目安に決められる。月額の費用では、管理する現金の財産額が1000万円以下は2万円、5000万円以下なら3万〜4万円、5000万円より上は5万〜6万円が相場だ。問題のある後見人は、月額報酬を増やすため、不動産や株券などの金融資産を処分しようとする。
株を売るように迫ってきた
83歳の妻の後見人になっていた関西在住の男性は、一緒に後見人になっていた弁護士から「奥さんの株を処分しましょう」と何度も言われた。その男性は言う。
「株券は、妻が会社員時代にコツコツと買っていたもの。年間で80万円の配当金が入っていました。だけど、売却して銀行に預けても、入ってくる利息は年間で1万5000円程度。何度説明しても株を売るように迫ってきた」
月額費用以外にも、後見人をつけるための初期費用や医師の鑑定費などが必要となる。初期費用は自分で手続きをすれば4万円程度で済むが、弁護士などの専門職の人に任せると100万円以上かかることもある。また、最初の手続きだけをして、あとはほったらかしという後見人もいる。
成年後見制度は、弁護士や司法書士の利益追求のための制度ではない。認知症や知的・精神障害があっても、本人が自分らしく生きるための公器である。
後見人の仕事は専門職でなければできないわけではない。事実、一般の人たちが後見人になる市民後見講座には、退職後のシニア、子育てを終えた主婦など、いろんな立場の人が集まっている。自分が認知症になったとき、誰に、どのような後見をしてほしいのか。その金額はどうするのか。一部の専門職に任せず、国民的議論が活発になることを期待してやまない。
(構成・ライター 西岡千史)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら