もうひとつ、私が日本のトイレで感心するのが、その「改善速度の速さ」である。
マクロ経済的には「失われた30年」と揶揄される日本だが、トイレの品質的には「じつに実り多き30年」であった。
先日、元プロレスラーの「不沈艦」スタン・ハンセン氏によるアントニオ猪木氏追悼メッセージを読んでいたところ、スタン・ハンセン氏が来日したころに驚き苦労したのは、日本のトイレだったという。
当時は、足腰は鍛えられても使い勝手が最強に悪い「和式トイレ」が主流であったし、いまとなってはその存在が信じられない「ぼっとん便所」も結構存在していた。
また、公衆トイレは貧相で、アンモニアのにおいがツンと鼻につくことも多く、空港のトイレや皇居の公衆トイレも、これでもかというほど汚らしかった。
しかし、そんなトイレ事情も、「失われた30年」の間に、すっかり様変わりした。
空港のトイレは、もはや「日本の国威発揚の場」として「ホスピタリティレベルの高さを象徴する空間」になっているし、オフィスやデパートなど商業施設のトイレの質も飛躍的に向上した。
今後、がんばるべきは、公園のトイレ(日本を代表する代々木公園のトイレも、実に汚い)と駅のトイレくらいではないだろうか(きれいなトイレが増えたとはいえ、まだまだ改善余地がある)。
これはあくまで私見だが、JR新幹線京都駅のトイレは、世界中から客が集まるのに、あんなに汚くてよいのだろうか。
たとえば阪急嵐山駅のトイレは観光客が多いからか、超きれいに改装され、もはや定住したくなるレベルのキレイな空間に大変身したのだが、主要観光地のトイレは嵐山駅をぜひ見習ってほしいものである。
海外から「そんな機能がいる?」と笑われる「進化」も
ちなみにその後は、海外の友人から「なんでそんな機能がいるのか?」と笑われるような、ボタンを押せば「鳥の泣き声」が聞こえたり、用を足すときの音をかき消す音楽が流れたりと、もはや「ガラ便(ガラパゴス便所)」ともいわれそうな「明後日の方向への進化」も見られる。
しかし、いざ「トイレの品質向上」で国の成長をランク付けするならば、日本は間違いなく「無敵の世界ナンバーワン」に輝くことであろう。
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