いま紹介した国々は「すべて平均的な所得水準が日本より高い国」だが、トイレを含めた「快適な無料生活インフラ」を鑑みれば、「1人当たりGDPや所得」に換算されない「快適な豊かさ」が日本にはある。
トイレの質を比較してバレる2つめの特徴が、日本の「技術水準と環境意識の高さ」である。
日本のトイレは丸っこくて可愛らしいうえに、節水に大貢献している。国際社会でSDGsがもてはやされるずっと以前から、「SDGs最前線みたいなトイレ」が日本中にあふれているのだ。
アメリカの巨大なトイレには1回流して10リットルくらいの水を使うものがあるのに対し、日本の高性能トイレの中にはその半分以下の水ですべての排出物を流し去るものもある。
日本のトイレメーカーの驚くべき「探求心の賜物」
なぜ私がトイレ事情に詳しいかというと、以前、某投資会社で働いていたとき、住宅設備メーカーも担当していたからだ。
それゆえ、日本のトイレ商品やその海外展開に関してはかなり知っているほうで、たとえば日本のトイレメーカーの雄であるTOTOは、中国などでは「高級ブランド」として認知されている。
その昔は、かの有名な歌手で女優のケリー・チャンさんの姿が、その便器のCMとともに街中で見られたものだが、日本価格よりよっぽど高い値段でTOTOのトイレが中国で売られていたのだ。
ちなみに本コラムを、私は訪問中のインドネシアで仕上げているのだが、インドネシアの高級ホテルやヴィラでも、TOTOのトイレが使われていて、日本のトイレへの敬意がさらに高まった。
電動式ではなく便座につけられたつまみを回せば放水される形式の、日本で見たことがない「シャワートイレ」を見つけては胸が躍り、その場で小躍りしたものである。
日本のトイレは、本来、汚く不快になりがちな空間を「脱臭機能」や「シャワー機能」や「防音機能」など、ありとあらゆる付加価値をつけて「一大リラクゼーション空間」に変えた。
トイレというジャンルを高いレベルで再定義したのは、日本のトイレメーカーの驚くべき「探求心の賜物」である。
このように、一国の「平均的なトイレ」を比べるだけで、その国の「技術水準や美意識の高さ」が、もろにバレてしまうのだ。
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