enaはなぜ「都立中高一貫校」に強いのか 全10校中7校で合格者数トップに

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何しろ、私立と都立だと、模試からカリキュラム、教材まですべてが異なる。たとえば模試だと、採点からして喧々諤々。これまでの1問1答であれば20分で終わっていた採点作業が、記述式で生徒の数だけ答えがあるので2日はかかる。問題によっては、ある教員は2点、別の教員は10点と、基準がそろわない状況が1年近く続いた。

困り果てて都立中の先生に教えを乞うたが、簡単には教えてくれない。それでも尋ねまくった。最初は話さないと言っていた都立中の先生も、しだいに口を開くようになった。そこから得た結論は、問題に正対するということ。レトリックを磨くのではなく、論理構成に配点の肝があるとわかった。

なぜ、ここまでして都立中に特化したのか。当時は、日能研を筆頭に中学受験に特化した学習塾が幅を利かせていた。そんな中にあって、enaは小学生から高校生までを手掛ける総合塾で、これといった特徴を出せないでいた。業績も最終黒字と最終赤字を行ったり来たり。こうした切羽詰まった状況が、都立中受験に路線を180度転換せざるをえない素地にあった。

狙うは全合格者数の過半

enaの授業風景。生徒数とデータの多さが強さの源泉だ

今では毎週2時間、研修を繰り返し、生徒に何が求められているのか、enaの教員全体で共有するようにしている。都立中入試では得点の開示があるので、生徒に答案を再現してもらい、得点と組み合わせてデータ化し、評価基軸を作っているという。

むろん、enaの快進撃を同業他社が黙って見ているはずもない。競合の追い上げを認識しつつも、池田専務は「うちを凌駕する知見を持っている塾はない。生徒数の多さとそれに伴うデータの多さがenaの強みであり、教員の育成も一朝一夕ではできない」と言い切る。

そのうえで、こんな目標をぶち上げる。「他社が都立中受験への参入を諦めるレベルにまで、合格者数を持っていきたい。そのラインが、全合格者数の過半である800人だ」(同)。目標まで、残り180人弱。まだまだアクセルを緩める気配はなさそうだ。

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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